Googleアナリティクスはビジネス領域でも広く利用されているツールですが、手軽に利用できる反面、「とりあえず設置した」レベルの簡単な導入設定のみで終えているサイトが多数を占めるのも事実です。トラフィックが小さいサイトであればあまり困らないのですが、ある程度の規模のサイトになると現状把握にも支障が出てきます。
ここでは、「データの計測基盤の整備」という側面でGoogleアナリティクスの導入設定をする際の、大まかな設定内容を解説していきます。ある程度の大きな規模のサイトを適切に計測し、運用に活用するには、仕様の把握や各種設定が不可欠です。
タイトルでは「月間100万PVサイトのための」としましたが、月間20~30万セッション以上のサイトであれば、今後の運用を見据えて取り組むべき内容になります。もちろん、そのレベルに至らないサイトでも理解しておいて損はありません。
要旨
目的:データ計測基盤の整備を意識したGoogleアナリティクスの導入設定、仕様の理解
対象:月間20~30万セッション以上のサイト
目次
「とりあえず設置」だと、どういう問題が起きるか
計測基盤の整備の意識を持たずにGoogleアナリティクスを「とりあえず設置」すると、以下のような問題が起こります。
- 表示される数字が不正確な場合が頻出する(データのサンプリング表示)
- データが集約されず、同じ項目のはずなのに分散してしまう
- 区別して計測したいのに、判別されない
- 「(other)」など、その他を意味する項目にまとめられてしまう
いくつかは小規模サイトであれば事後集計などで対処できることもありますが、ある程度の規模になると事後の対処が困難になります。また、大規模サイト特有の事象もあります。
これらの事象から、やらなければいけないことは大まかに以下にまとめられます。
- 仕様を踏まえた適切なデータの計測
- データの集約
- データの判別
Googleアナリティクスは、トラッキングコードのとりあえず設置のレベルでも、データの「収集」を始め、標準の形で「変換」「保存」します。しかし、その後の分析に耐えるレベルにするには、サイトやビジネスに合わせて適切な形にデータを「変換」「保存」する必要があります。
▲データは、収集ののち、適切な形に変換して保存しなければ、分析に支障が出る
あらゆる分析において、データは単に収集するだけでなく、分析に耐えるレベルに前処理や変換をして、「データの品質」を高めなければなりません。ゴミ混じりのデータのままどれだけ分析しても、結果はゴミ混じりです。
サイトの規模や分析の目的に合わせて、Googleアナリティクスにデータを適切な形に変換して格納してもらう準備が必要だ、ということです。
前置きが長くなりましたが、それでは始めます。事前にお伝えしておきますが、非常に長いです。
アカウント構成の整備
Googleアナリティクスのアカウント構成は、はしょって説明すると「アカウント>プロパティ>ビュー」の3階層で構成されます。執筆時のそれぞれの上限は次の通り。
- アカウントの上限は100個
- アカウント内に作成できるプロパティの上限は50個
- プロパティ内に作成できるビューの上限は25個
上限が上記でないケースもありますが、多数のサイトを保有、もしくは予定していれば、この中でのやりくりを想定しなければなりません。まれに、同じドメイン配下で複数サイトを運用し、それらを同一プロパティ内のフィルタ適用ビューでやりくりしている場合がありますが、支障が生じやすい構成です。
また、「1アカウントにつき1ヶ月あたり1000万ヒットを上限として、無料でお客様に本サービスを提供」という記載が、Googleアナリティクスの利用規約にあることにも留意が必要です(ヒットとは、Googleアナリティクスのビーコンが飛んだ数。ページビューやトランザクション、イベントなどの合計)。別のヘルプページでは、その制限がプロパティ単位として解釈できる内容で記載されていますが(データ制限 – アナリティクス ヘルプ)、とまれこのような上限が設けられています。
細かなレベルでは、AdWordsは複数のアカウントに連携が可能ですが、AdSenseは複数のアカウント連携には対応していなかったと思います AdSenseは現在は複数のアカウントに連携が可能です。他にも考慮すべき細かな点はありますが、このようにアカウント構成の面で制約があるということです。
ビューに関しては、オリジナルの生ログに近い形のビューを残しつつ、目的別に準備すると良いでしょう。例えばデバイス別にビューを用意するのも、ひとつのアイデアです。
Googleアナリティクスでデバイス別に状況が確認できるように、それぞれのビューを作成する – 真摯のブログ
運用途中からGoogleアナリティクスのアカウント構成を大幅に見直すのはとても難しいのですが、見直せるタイミングや新規サイトへの導入のタイミングなどに、取り組める部分から整備していくと良いでしょう。
アカウント、ユーザー、プロパティ、ビューの階層構造 – アナリティクス ヘルプ
アナリティクス アカウントの構成について – アナリティクス ヘルプ
トラッキングコードの設置と管理
Googleアナリティクスをサイトに導入するには、トラッキングコード(もしくはトラッキングID)が必要になります。設置にはいくつか方法があります。
- HTMLのhead要素内に直接設置(直貼り)
- jsファイルでの管理
- 各種タグマネージャでの管理
どのように設置するかの判断基準は、以下のようなものになります。
- 今後トラッキングコードのカスタマイズが発生するかどうか
- 一部コンテンツのみトラッキングコードカスタマイズなど、更新が容易かどうか
- 新規ページ追加時に設置漏れが発生しない運用はどれか
- 自社でコントロール可能なのはどれか
- 設置負荷や運用負荷が低いのはどれか
上記の要素を踏まえて判断します。大きなサイトになるほど、影響は大きくなります。
加えて、ECサイトでeコマーストラッキングを行うには、トラッキングコードに動的な値の吐き出しなどのシステム対応が必要になります。拡張eコマーストラッキングも同様です。
ユニバーサルアナリティクスでのeコマーストラッキングの際の注意点 – 真摯のブログ
複数ドメイン(クロスドメイン)の計測
複数ドメインやサブドメインをまたぐ計測の場合、諸々の対応が必要です。複数ドメインであれば、トラッキングコードをカスタマイズし、加えて参照元除外リストにすべての計測対象ドメインを指定する必要があります。
また、複数ドメインの場合もサブドメインを含む場合も、ページURLを「ホスト名+URL」として格納するフィルタを適用した方が良いケースがほとんどです。標準ではページURLはホスト名を含まない形で値が格納されるため、例えば「/」はどのドメインのページなのかが判別できないためです。
余談ですが、「サブドメインのサイトのみを計測」する場合は、参照元除外リストにはサブドメインを指定する必要があります。「a.mydomain.com」のサイトで参照元除外リストを「mydomain.com」で設定すると、サイト「mydomain.com」経由の流入が適切に計測されないはずです。
URLが変化しないページ遷移の計測(仮想ページビュー)
フォームなどのプログラムでPOSTメソッドを利用していたりAjaxを利用している場合、URLが変わらずにページ遷移をすることがあります。URLが同じであれば、Googleアナリティクスは「同じページに何度もアクセスしている」という計測をしてしまいます。これを回避して判別するのが「仮想ページビュー(バーチャルページビュー)」の仕組みです。
「仮想ページビュー」とは、現在のURLではなく、指定した任意のURLで上書きして計測する仕組みです。一般的なお問い合わせフォームなどでも、対応が必要なケースが比較的多いです。
Page Tracking – Web Tracking (analytics.js) | Universal Analytics Web Tracking (analytics.js) | Google Developers
「Overriding Default Values」の項を参照
関係者のトラフィックや、計測すべきでないトラフィックの除外
大きなトラフィックのサイトであれば、社内など関係者のトラフィックが占める割合は小さくなるのですが、とはいえ「特殊なトラフィック」には違いありません。計測すべきでないトラフィックは、できれば除外します。
関係者のトラフィック除外
社内など関係者のトラフィック除外には、いくつか方法があります。
- フィルタによるIPアドレス除外指定
- カスタムディメンションを利用して関係者をラベル付けしたフィルタ除外指定
- ブラウザのオプトアウトアドオン
「現実的に社内で取り組める対応はどれか」という基準で判断すれば良いでしょう。実際には関係者トラフィックを100%除外することは不可能に近いです。社内の組織管理面の課題や、多数のアプリ内ブラウザの存在などがあるからです。
本番環境のホストのみを計測対象に指定することも重要です。テスト環境や意図しない環境のトラフィックを除外できます。
Googleアナリティクスで、テスト環境のトラフィック除外や、他者にサイトをコピーされた際の計測データ混在リスクを回避する – 真摯のブログ
先ほどのアカウント構成と関係する話ですが、「関係者のみ計測するフィルタ」を適用した「関係者トラフィックのみのビュー」を準備しておけば、様々なテスト計測の確認が行えます。
計測すべきでないトラフィックの除外
計測すべきでないトラフィックの除外設定として、「ボットのフィルタリング」の設定は各ビューで行えます。これはIABが所有するボットリストなどを除外対象とするというものです。日本国内向けのサイトであればそこまで威力を発揮しない印象ですが、もちろん適用すべき設定です。
「リファラースパム」への対応は「積極的には対応しない」
近年増加したいわゆる「リファラースパム」については、現時点では「積極的には対応しない」のが妥当な選択肢だと考えます。物理的にはフィルタで除外指定を行えますが、増え続けるスパムを毎日判別して追加設定する行為は、生産性の低い工数です。Google側も対応する意向を示しており、それを待つのが賢明でしょう。もちろん、目に余る大きなリファラースパムは除外しても良いと思います。
AdWords連携、AdSense連携など
AdWords連携
そのサイトに流入するAdWordsを運用していれば、連携しておきましょう。管理画面から、Googleアナリティクスの各ビューとAdWordsアカウントをリンクできます。AdWordsの管理者権限やGoogleアナリティクスの編集権限が必要です。
アナリティクスと AdWords をリンク(リンクを解除)する – アナリティクス ヘルプ
AdWords以外のリスティング広告などは、後述の「カスタムキャンペーン」を利用して判別します(Yahoo!プロモーション広告など)。
AdSense連携
そのサイトでAdSenseを運用していれば、連携することで流入やページと紐付けてデータを確認できます。管理画面から、Googleアナリティクスの各ビューとAdSenseアカウントをリンクできます。こちらもAdSenseの管理者権限やGoogleアナリティクスの編集権限が必要です。執筆時では、金額の単位はドル($)表記から変更できません(リリースからずっとだと思います)。
アナリティクスでの AdSense データの概要 – アナリティクス ヘルプ
Search Console連携
Search Console(旧ウェブマスターツール)も連携可能ですが、執筆時では連携で大きなメリットは享受できません。単にSearch Consoleの「検索アナリティクス」の値が取り込まれるだけであり、しかもその数字は概数です。Googleアナリティクスのディメンションや指標、セグメントなどと組み合わせて利用できません。
2017年現在、Search Consoleとの連携で、ランディングページごとやデバイスごとでGoogleアナリティクスの指標データとSearch Consoleのデータが連結されてレポート表示されています。一部のGoogleアナリティクスのディメンションはセカンダリディメンションにて利用できますが、Search Consoleと関連したものに限定されています。セグメントは利用できません。
ユーザーの年齢性別などの属性取得とリマーケティング活用(DoubleClick Cookie対応)
ユーザーの年齢性別、興味関心に関するデータを取得するには、プロパティ設定からその機能を有効化します。加えて、Googleが提示するポリシーに準拠した上でプライバシーポリシーへの明記が必要です。
AdWordsを連携していれば、この有効化で、Googleアナリティクスにてリマーケティングユーザーリスト作成などの活用ができます。
ユーザー属性とインタレスト カテゴリに関するレポート – アナリティクス ヘルプ
Google アナリティクスの広告向けの機能に関するポリシー要件 – アナリティクス ヘルプ
カスタムキャンペーンの利用(UTMパラメータ)
集客施策の判別としてのカスタムキャンペーン
アカウントレベルで連携したAdWordsを除き、リスティング広告経由などの流入は、何もしなければ「リスティング広告経由」などと判別されません。自然検索経由やその他の参照サイト経由などに含まれてしまいます。費用や工数をかけた集客施策は、その効果測定を適切に行えるように、判別する必要があります。その判別に利用する仕組みが、「カスタムキャンペーン」です。
カスタムキャンペーンは、URLに独自のパラメータ(UTMパラメータ)を付与して集客することで、Googleアナリティクスが自動で判別する仕組みのことです。Googleアナリティクス側への設定ではなく、自社がコントロールする集客施策に反映させる仕組みです。以下のような集客施策によく利用します。
- リスティング広告をはじめとした各種広告の判別(AdWordsを除く)
- メール施策の判別
- 標準で判別されないソーシャルメディアの判別
カスタム キャンペーン – アナリティクス ヘルプ
URL 生成ツール – アナリティクス ヘルプ
Campaign URL Builder — Google Analytics Demos & Tools
仕様を踏まえてカスタムキャンペーンの値をうまく利用すると、Googleアナリティクスの「集客サマリー」「チャネル」などのレポートで、流入を自動分類できます。
Googleアナリティクスのカスタムキャンペーンのメディア(utm_medium)の値に規定のものを指定して、自動判別させる | 真摯 (Cinci)
値の重複や煩雑なレポートを避けるため、ルールが必要
このカスタムキャンペーンですが、リスティング広告などを実施しているのであれば、ある程度の値のルールを設けた方が良いでしょう。複数の広告代理店に依頼していたり、部署ごとに様々な施策が行われていたりすると、破綻してしまいます。値の重複や煩雑なレポートの原因になるため、「メディア (utm_medium)」「参照元 (utm_source)」「キャンペーン (utm_campaign)」の構成の最低限のルールが必要です。
ページの分散計測防止
「計測URLの集約」です。サイトのトラフィックが大きくなると、「同じページでありながら異なるURLとして計測されるのを防ぐ」必要が出てきます。URLのバリエーションが増えてデータが分散してしまうのと、ページURLがその他を意味する「(other)」に丸められてしまうのを防ぐためです。
例えば「/」「/index.html」「/?cid=aaa001」は実質は同じページですが、Googleアナリティクスはそれぞれ別のURLとして処理します。これを区別しないのであれば、何らかの処理が必要です。
また、Googleアナリティクスは1日に計測可能なデータ件数に制限を設けており、1日のデータ件数が50,000件を超えると、残りのその日の計測データはすべて「(other)」に集約する、という仕様があります。「すべてのページ」レポートに「(other)」がすでに登場していれば、それをできるだけ回避していくことになります。
- 「デフォルトのページ」設定やフィルタなどによる計測URLの正規化
- 「除外するURLクエリパラメータ」設定などによる、計測上不要なクエリパラメータの除去
- フィルタによるページの集約
上記の対応を、計画的に進めていきます。
中規模以上サイトのGoogleアナリティクスで「(other)」を「すべてのページ」レポートから回避する方法 – 真摯のブログ
Googleアナリティクス設定で除外すべきURLクエリパラメータ – 真摯のブログ
トラフィックの大きなサイトや中規模以上のサイト、システム側で動的にページ生成しているサイトなどの場合、この対応が必要なことが多いです。経験上、この周辺の設定は意外に工数が掛かる印象があります。
計測の際にURLからクエリパラメータを除去しつつ、必要なパラメータ値はJavaScriptなどで取得し、カスタムディメンションに格納する、という方法もあります。
参照サイトやメディアの分散防止
参照元やメディアの値の集約
「参照元やメディアの値の集約」です。ページURLと同様に、参照元やメディアの値が実質は同じでありながら異なるものとして計測されることがあります。サイトのトラフィックが大きくなるとその影響も大きくなるため、対処すべき内容です。
例えば、いくつかのWebメールサービスは複数のサブドメインで運用されており、計測される参照元のバリエーションは意図せず増えてしまいます。集約すべきと判断できる参照元は、フィルタでまとめていきます。
Googleアナリティクスの参照サイトで、WebメールのドメインURLの分散をまとめる | 真摯 (Cinci)
例えばFacebook経由の流入も、デバイス種別やLink Shim経由かどうかの判別として、複数のサブドメイン経由に分けてリファラーを記録します。もしこの区別が自社に不必要なら、これらを集約するフィルタを適用しても良いでしょう。
小文字への統一など
カスタムキャンペーン(UTMパラメータ)を利用している際、意図せず値に「大文字の英字」を使用してしまっていることがあります。Googleアナリティクスは大文字と小文字を別の値として認識するため、また適切な判別に支障が出ることがあるため、フィルタで小文字にそろえる指定などを適応する必要があります。
例えば、メディア(utm_medium)の値を大文字で「CPC」と指定すると、Googleアナリティクスは「リスティング広告経由」と判別しません。本来はリスティング広告の運用側でリンク先URLを修正すべき内容ですが、出稿量が膨大な場合、やむを得ずGoogleアナリティクス側で変換処理をするという判断も必要になってきます(余談ですが、この場合でも、チャネルでは適切に分類されないなどの支障が残ります。本来はリスティング広告の運用側で修正すべき内容です)。
日本固有の検索エンジン追加
Googleアナリティクスは、一部の検索エンジン(日本固有のものなど)経由は、自然検索(Organic Search)経由のトラフィックと認識せず、一般の参照サイトの扱いとなります。参照サイト経由であれば、検索キーワードは計測されません。
「オーガニック検索ソース」の項目で検索エンジンを追加指定することで、自然検索(Organic Search)のトラフィックとして認識し、貴重な検索キーワードも取得できます。設定後からのデータに反映されます。
Googleアナリティクスに検索エンジンを追加する | 真摯 (Cinci)
目標設定(コンバージョン設定)
目標設定、つまりコンバージョン設定です。ここまで熟読するような人にはコンバージョン設定の重要性は説明不要だと思いますので、説明いたしませんが、サイト上の成果のポイントを指定してください。設定後からのデータに反映されます。
目標の「値」に「1コンバージョンあたりの金額価値」を設定しておくと、のちの分析の際に非常に役立ちます。流入ごとの金額価値が把握できたり(指標[目標nの値])、そのセッションにおける閲覧ページの貢献金額がわかるようになります(指標[ページの価値])。
目標到達プロセスの設定は、フォームの各ステップなどをそれぞれ設定しておくと、各ステップでの離脱状況が確認できるようになります。
ユーザーアクションの計測(イベントトラッキングなど)
標準では計測されないユーザーアクションをイベントトラッキングで計測
Googleアナリティクスは、PDFなどトラッキングコードを実装できないコンテンツの利用状況は、そのままでは計測できません。また、URLの変化しないアクションやサイト外への遷移なども、そのままでは計測できません。「イベントトラッキング」などを用いたカスタマイズで、それらのユーザーアクションを計測することになります(場合によっては「仮想ページビュー」)。
例えば、PDFダウンロード、外部サイト誘導、「カートに入れる」などURLが変化しないような行動喚起要素の押下など、です。
イベントトラッキングには上限があり、慎重な利用が必要
いくつか注意点があります。まず、イベントトラッキングには1セッションあたりの計測の上限があります。ヒット(大半はページビューとイベントの合計)が、1セッションあたり500件まで、1ユーザー1日あたり20万件までとなっています(ただしeコマース計測でのトランザクションのヒットを除く)。
加えて、不用意にイベントを計測しすぎると、Googleアナリティクスの利用規約にある「1アカウントにつき1ヶ月あたり1000万ヒット」の上限を越える可能性が高くなります。1か月あたりの合計イベント数は見落とされがちです。スクロール量の計測など、カスタマイズ次第で様々な値が計測できるこのイベントですが、ある程度のトラフィック規模のサイトであれば、慎重な利用が求められます。
ルールを設けて管理を
また、カスタムキャンペーンと同様に、イベントトラッキングでもルールを設けてどのような値を計測しているのかの管理が必要です。イベントトラッキングを多用している企業の話をお伺いすると、古くからの計測の蓄積のため、何をどれだけ計測しているのかを把握されていないことが多いです。
サイト内検索計測の設定
サイトにサイト内検索が設けられていれば、その検索状況の計測も可能です。サイト内検索後の回遊や離脱状況、利用した検索キーワードの詳細などがわかります。
計測URLのバリエーションを増やさないという意味で、「URLからクエリパラメータを削除」を有効にしておいた方が良いです。
サイト内検索を設定して検索データを確認する – アナリティクス ヘルプ
チャネル設定
「チャネル」レポートでは、流入をGoogleアナリティクスが自動でいくつかのグループに分類します。この分類は、ビューの「チャネル設定」でカスタマイズが可能です。
例えば、以下のようなチャネルグループを設けるのもひとつのアイデアです。
- オウンドメディア、自社関連サイト(Owned Media)
- リマーケティング広告をPaid SearchやDisplayから分類(Remarketing)
- 一般向けのメールと会員メールを分類
チャネル設定では、「Default Channel Grouping」を編集する方法と、「新しいチャネルグループ」の作成の2通りあり、以下のような違いがあります。
- Default Channel Groupingの編集…編集した時点以降から計測されるデータに反映される。ディメンションとしてそのまま利用できるため、セグメントやセカンダリディメンション、APIなどで活用できる
- 新しいチャネルグループの作成…過去データにも反映されるが、レポートのサンプリング表示の影響を受けることがある。ディメンションとしては利用できない(セグメントやセカンダリディメンションで「新しいチャネルグループ」は利用できない)
「チャネル設定」でカスタマイズできる「チャネルグループ」とは別に、マルチチャネル系の各レポートで利用する「カスタムチャネルグループ」と呼ばれるものがあります(名称がややこしいですが、私のせいではありません)。こちらも、必要あれば作成します。これは説明が面倒くさいので、すいません省略します。マルチチャネル系レポートで「MCFチャネルグループテンプレートをコピー」から進めると便利です。
コンテンツグループ設定
「すべてのページ」「ランディングページ」の各レポートは、標準ではページ単位のレポートですが、「コンテンツグループ設定」を行うことで、任意のグループ単位でもレポートを利用できるようになります。
コンテンツグループ設定は、3つの方法で設定できます。設定後からのデータに反映されます。
- トラッキングコードで実装する(Googleタグマネージャであれば「タグ」の設定でも可能)
- URLやページタイトルの文字列からの抽出分類(正規表現で指定した箇所をそのままグループ名で分類)
- URLやページタイトルの文字列によるルール定義(ルールセットの作成)
3つ目の「URLやページタイトルの文字列によるルール定義」が、比較的手軽に設定できると思います。
コンテンツ グループを作成、編集する – アナリティクス ヘルプ
設定を行うと、先述の通り「すべてのページ」レポートなどがコンテンツグループ単位でも利用できるようになるほか、「ナビゲーションサマリー」や「行動フロー」などユーザー動線を把握できるレポートや機能もコンテンツグループ単位で利用できます。
ユーザー動線分析は、重要なユーザー動線の発見ではなく、想定ユーザーシナリオとの差をまずは確認すべし – 真摯のブログ
任意のユーザー属性やページ属性の取得(カスタムディメンションの利用)
カスタムディメンションの機能を用いると、ユーザーレベル、セッションレベル、ページレベルで、何らかの属性情報をラベル付けできます。例えば、セッションレベルで「ログイン / 非ログイン」を値として取得すれば、ログインしたセッションとしていないセッションの行動の違いを分析できます。
自社サイトの運用内容に応じて、様々な値の取得が考えられます。
- 会員 / ゲスト(ユーザーレベル)
- ゴールド会員やレギュラー会員などの会員種別(ユーザーレベル)
- 会員登録時に取得する性別(ユーザーレベル)
- 会員登録日、資料請求日(ユーザーレベル)
- ログイン / 非ログイン(セッションレベル)
- ページのカテゴリー(ヒットレベル)
- ページの著者(ヒットレベル)
- ページの商品カテゴリー(商品レベル、ヒットレベル)
カスタムディメンションを利用するには、プロパティのカスタム定義からまずは設定が必要です。その後、トラッキングコードをカスタマイズするか(値によってはシステム側で動的に吐き出す必要あり)、データのインポートで取り込みます。カスタムディメンションは、20個まで利用できます。
カスタム ディメンション / 指標 – アナリティクス ヘルプ
Custom Dimensions & Metrics – Web Tracking (analytics.js) | Universal Analytics Web Tracking (analytics.js) | Google Developers
複数のトラッキングIDでの計測
仕様上、Googleアナリティクスは複数のトラッキングIDでの計測は可能です(「マルチトラッキング」と呼ぶ人もいらっしゃいますが、正式な呼び方ではないように思います)。「あるサイトを計測」「別のサイトも包含して計測」など、複数のトラッキングIDを利用して、計測対象を多様化できます。
Advanced Configuration – Web Tracking (analytics.js) | Universal Analytics Web Tracking (analytics.js) | Google Developers
「Working with Multiple Tracking Objects」の項を参照
気をつける点として、複数サイトを包含するとトラフィック量が過大になり、上限を超えない対処が必要な場合があります。またCookie干渉の回避が必要な場合もあります。
クロスデバイス計測への対応(「User-ID」機能)
「User-ID対応」について。通常のGoogleアナリティクスでは、複数デバイスや複数ブラウザを利用するユーザーのすべての行動を「そのユーザーの行動」として紐付けられません。しかし「ログインする形式のサイト」に限り、「User-ID」の機能を利用して、ログインしたユーザーの行動のみデバイスやブラウザをまたいで統合できます(非ログインの場合は統合できません)。
利用手続きを済ませた上で、トラッキングコードに動的な値の吐き出しなどのシステム対応が必要なほか、IDに個人を特定不可のものを使用するなどの諸注意があります。
User ID とクロスデバイス レポート – アナリティクス ヘルプ
User ID – Web Tracking (analytics.js) | Universal Analytics Web Tracking (analytics.js) | Google Developers
この実装で活用できるサイトは、非常に少ない、あるいはかなり限定されると思います(*)。
*追記補足。「この実装で活用できるサイトは少ないor限定される」件の理由について。「ログインしていないときの行動」が抜け落ちるため、というのが理由です。かなりがんばって利用者のPCとスマホのブラウザ常時ログインまでは至るかもしれませんが、それでも企業側からのプッシュにメールやソーシャルメディアが相応にある場合、スマホの各アプリ内ブラウザまで常時ログインが広く展開できるかといえば、相当大変なのではと感じます。そのプッシュの反応を含めた「ログインしていないときの行動」を見積もるのは、難しいと考えます。
その他の諸設定
「タイムゾーン」や「通貨表示」といった基本的な細かい諸設定も、サイトにふさわしい内容で設定します。
拡張リンクアトリビューション
「拡張リンクアトリビューション」について。「ページ解析」レポートではサイト内リンク先のクリック数(遷移数)がわかりますが、同一リンク先のリンクがページ上に複数存在する場合、標準ではクリック数は「複数存在するリンクの合計クリック数」を表示します。これを解消するのが「拡張リンクアトリビューション」です。利用するには、プロパティ設定で有効にした上で、トラッキングコードをカスタマイズします。
リマーケティングユーザーリスト
「リマーケティングユーザーリスト」は、AdWordsの運用に応じて作成します。どちらかといえば運用時の設定です。
データのインポート
「データのインポート」は、必要であればコストデータやカスタムディメンションで定義した値など、データを仕様に沿ってアップロードしてください。がんばってください。
運用面で活用できる機能
サイトの運用面で活用できる機能は今回は省略いたしますが、以下のような機能は便利です。
- マイレポート(ダッシュボード機能)
- カスタムレポート
- セグメント
- メール配信
- カスタムアラート(インテリジェンスイベント)
データを単に収集するだけでなく、前処理や変換でデータの品質を高めて「計測基盤の整備」を
冒頭でも触れましたが、Googleアナリティクスをその後の現状把握や分析に耐えるレベルにするには、データを単に収集するだけでなく、前処理や変換をしてデータの品質を高めなければなりません。そのよくある項目を整理して上記にまとめてみました。
実際には、サイトの目的や戦略、実情に合わせてさらにカスタマイズを行います。
Googleアナリティクスは、リリース当初から無償で利用できたこともあって利用者はとても多いですが、もはやツールとしてはハイエンドの高機能ビジネス向けツールです。デフォルトの実装でもGoogleアナリティクスはよろしくやってくれますが、ある程度の規模のサイトで導入するのであれば、それ相応の対応が必須です。つまり「データ計測基盤の整備」が必要です。
書籍やドキュメント
各項目で設定内容の詳細には触れませんでしたが、紹介しているブログ記事やドキュメント、2014年に私が執筆した書籍、2015年の木田さんの書籍のいずれかをご覧いただければ、詳細の設定内容はカバーされていると思います。
Googleアナリティクス 実践Webサイト分析入門 ユニバーサルアナリティクス対応 Web担当者が身につけておくべき新・100の法則。
いちしま 泰樹 著
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できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版 Web解析の現場で使える実践ワザ 260 Googleタグマネージャ/オプティマイズ/データスタジオ対応 (できる逆引きシリーズ)
木田 和廣 著
アマゾンで詳細を見る »
どうぞみなさん、計測基盤を整備してください。分析はそこからがスタートです
で、実はこの記事の内容は、筋のいい人が読めばこのまま「Googleアナリティクス導入設定コンサル」ができるレベルだと思うんですね。当社も「Googleアナリティクス導入設定支援」をサービスとして持っていますが、どうぞどうぞ代理店様やWeb制作会社様やWebコンサル会社様は、この記事の内容を元に導入コンサルをしていただいて構いません。むしろ、そうすることで多くの企業様がハッピーになるわけですし。
当社がWebビジネス改善のコンサルの依頼をいただいたときに、「やりたい取り組みはたくさんあるけれども、結局最初にやらなければいけないのは全面的なGoogleアナリティクスの導入見直し」というのがとても悲しいんですね。計測基盤の整備をして、そこからしばらくデータの蓄積期間も必要です。ご依頼いただく案件のかなりの割合が、そのような状態です。当社も、企業様のGoogleアナリティクスの導入設定支援だけをものすごくしたいわけではなく、そこから先の「改善」に取り組みたいのです。企業様もそのはずです。「計測基盤の整備」を終えてからがスタートです。
ひとつ言い忘れてました。サイトのリニューアルを行えば、もちろん多くの項目を見直す必要があります。
企業のWebビジネスを支援されている代理店様やWeb制作会社様各位、どうぞよろしくお願いいたします。
もちろん当社でも、このようなGoogleアナリティクスの計測基盤の整備から、その先の改善の支援などを承っております。ご興味ございましたらどうぞお待ち申し上げております。
以上、真摯のブログからお送りしました。
株式会社真摯は、お客様と真摯に向き合い、伴走するWebコンサルティング会社です。