コンテンツマーケティングのオーディエンスに「顧客層の外側」を含めるべき理由
コンテンツマーケティングにおけるオーディエンスの重要性について、これまで何度かブログ記事で触れてきました。今回は改めて「オーディエンスとは誰か」というテーマで考察を深めてみます。
私はコンテンツマーケティングにおけるオーディエンスを「コンテンツに触れてそのブランドに魅了された、再アプローチ可能なユーザー」と捉えています。その企業の「支持者」とも言えるでしょう。「支持者」という言葉を私が初めてこのニュアンスで受け止めたのは、いま「攻城団」を運営されている河野武さんからです。
顧客層の「外側の人たち」が持つ価値
重要なのは、コンテンツマーケティングのオーディエンスは必ずしもビジネスのターゲット層(顧客層)だけに限定する必要がないということです。むしろ、顧客層の「外側の人たち」もオーディエンスに含むことで、コンテンツマーケティングのビジネスへの貢献度は高まります。

なぜなら、例えば支持者は自然な推薦者となり得るからです。家族や異業界の友人がその企業や商品を知っていて、「いいんじゃない」と勧めたり背中を押してくれるかもしれません。人は信頼する相手からの話を前向きに聞いてくれます。
顧客層だけにフォーカスを絞ってコンテンツを発信していると、テーマは狭く深くなりがちです。テーマがニッチになるほど届く範囲は限定的になり、外側の人たちには伝わりにくくなります。狭い世界での盛り上がりだけでビジネスが成立するケースももちろんありますが、一般的には時間とともにその範囲は縮小します。
むやみにテーマを広げよというわけではありません。一部のコンテンツでは「顧客層の外側の人たちにも届けるには、どのようなテーマ選択やコンテンツ展開、流通経路が考えられるか」を検討してみることです。
そして、コンテンツマーケティングの取り組みとしては、オーディエンスの熱量こそが先行指標の一つだと捉えています。

勧めたり背中を押したりしてくれる人、そういった支持者は多い方がいいじゃないですか。
「バイヤーペルソナ」と「オーディエンスペルソナ」の使い分け
JADEの伊東さんが、コンテンツ・マーケティング・インスティテュートのロバート・ローズ氏の提唱として各所で紹介されているのですが、「バイヤーペルソナ」とは別に「オーディエンスペルソナ」を設定することはとても有効です。
ただ、「オーディエンスペルソナ」の話を詳しく解説されていたJADEのニュースレターは公開されていないのですよね……。連載「深掘りコンテンツマーケティング」が公開されるとよいのですが。
代わりに伊東さんによる別の記事を紹介します。「非購入者をもてなすことの価値」について。
自社のオウンドメディアのオーディエンス全体のうち購入者は通常ごく一部ですが、非購入のオーディエンスの中にはコンテンツをシェアして広めてくれる層がいたり、毎回必ず読んでくれるエンゲージメントの高い層がいます。(中略)
非購入オーディエンスとの良い関係づくりは、ただナーチャリング施策というだけでなく、自社サイト・ブランドのオンラインプレゼンスを高めることに寄与する重要なアクティビティと捉えるべきものです。
コンテンツマーケティングを飛躍させる「オーディエンス・ストラテジスト」という職能 – 株式会社JADE
もう一つは、「今の非購入者」は、「今のビジネスモデル」との相性においてそうなっているだけで、別の的確なビジネスモデルを構築できれば、それに対しては購入者になる可能性があるという点です。
コンテンツマーケティングを飛躍させる「オーディエンス・ストラテジスト」という職能 – 株式会社JADE オーディエンスは見方を変えればポテンシャルバイヤーでもある
「サブスクライバー(購読者)と一般訪問者」「購入者と非購入者」「購入者、シェアや拡散してくれる人、関心層」「購入者と別のビジネスモデルの潜在顧客」というように切り口や解像度を変えて見れば、直接的な顧客層の「外側の人たち」が持つ価値に気付くはずです。
例えば私は、アナグラムさんやアユダンテさんやJADEさんといった企業のコンテンツに日常的に接しています。部分的には競合関係にあったり、隣接領域では学んでいるものも多くありますが、それだけでなく企業の放つメッセージや姿勢にも共感しています。
私はそれらの企業にとっては直接の顧客層ではなく「外側の人」に該当するはずです。しかし、例えばクライアント様から「運用型広告(あるいはSEO)でおすすめの企業はありますか?」と相談を受けたとき、何の見返りもなく「○○とか良いと思いますよ」と先ほど挙げた企業を軽く紹介することがあります。これは私が「支持者」としての役割を果たしているといえます。
昨日まで「外側の人たち」だった人が、部署異動や転職によってステータスが突然「顧客層」に変化する可能性だってあります。
マーケティング担当者が「ペルソナ」を考えるとき、多くの場合それは直接的な顧客層「バイヤーペルソナ」として描かれます。コンテンツマーケティングを推し進める上で「オーディエンスペルソナ」も設定すれば、その取り組みの結果に広がりを生むはずです。



顧客層の外側にいる「支持者」はふとしたタイミングで「いいアシスト」をするのですよ。
オーディエンスビルディングは人から信頼を得ることでもあり、時間を要する取り組みです。ターゲティングを過度に狭めず、「顧客層の外側」の価値を意識してみると良いです。



