コンテンツマーケティングで重要なのは、PVよりも再アプローチ可能なユーザーとの関係性構築

コンテンツマーケティングやオウンドメディアのKPIに何を設けるかという問題は、ときどき議題に挙がるテーマです。結局は「なぜやるのか」「どのような状態を目指すのか」といった目的に紐付くのですが、目的を達成できている状態「ゴール」を分解して重要指標の候補を検討していると、多くのケースで「ページビュー」が挙がってきます。

個人的には、ページビューを複数あるKPIの一つに設けてもよいとは思っています(もちろん設けなくてもよいです)。しかしページビューだけが唯一のKPIだったり、最重要で必達のものとして扱うことには反対です。ページビューはコンテンツの品質を担保せず、それが組織でKPIとして扱われた場合に品質を軽視した運用に向かいやすいからです。そうなると目的の達成は遠くなります。

一見わかりやすく対外的にも示しやすい「規模」を上層部が求めることには一定の理解をします。しかし、運用チームには目的からブレずにいてほしいのです。

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取り組むべきはオーディエンスビルディング

目的にもよりますが、企業側の視点としては「再アプローチ可能なユーザーとの関係性構築」が目的達成に必要な要素の一つだと捉えています。中心として取り組むべきはオーディエンスビルディングです。

ユーザーに対して「コンテンツの閲覧」だけを求めていないはずです。各コンテンツに応じたアクションを期待し(関連コンテンツ遷移、シェアなど)、企業と接点を持ってほしいと思っているはずです(ニュースレター購読、会員登録、ソーシャルメディアアカウントのフォローなど)。コンバージョン関連のアクションも期待しているはずですが、それには多かれ少なかれユーザーとの関係性構築が必要になります。

オーディエンスビルディングの重要さは、古田大輔氏によるニューヨーク・タイムズのドキュメント「Innovation Report」の紹介記事で知ったように記憶しています1。2014年頃の話です。Innovation Reportでは「読者開発 (audience development)」として取り上げられていました。

ニューヨーク・タイムズのInnovation Reportに関しては皆さんご自身で検索してみてください。

古田大輔氏は、デジタル時代のメディアのマーケティング戦略として「コンテンツ」「ディストリビューション」「エンゲージメント」の3つの軸の重要性を挙げていらっしゃいました。そこから展開して、「オーディエンスビルディング」を中心に据えた4つの戦略軸として私は捉えています。

コンテンツマーケティングの4つの戦略軸
コンテンツマーケティングの4つの戦略軸。箇条書きによる詳細を含め手を加えています

関係性構築の把握はユーザーリストで

では関係性構築をどうやって把握するか。

メールマガジンやMAでは購読者数やリスト内の人数、配信後の状況を把握できます。ソーシャルメディアでもフォロワー数や投稿へのエンゲージメントを確認できます。

Webサイトでは特定条件のユーザーリストの把握で代替できます。GA4ではオーディエンス機能が該当します。特定領域の閲覧履歴の有無、アクションやエンゲージメント、通算n回以上の訪問履歴などを組み合わせれば、「Webサイトに積極的な関与のあるユーザー群」の状況をコンテンツマーケティングの効果として把握できます。再アプローチ可能なリストかといえば理想には及びませんが、Google広告での広告配信に利用できます。

取得したメールアドレスもソーシャルメディアのフォロワーも、Webサイトの特定条件のユーザー群も、どれもユーザーリストです。どのレベルの匿名性か、再アプローチは可能か、どこが保有するデータかといった違いはありますが、一定の関係性のユーザーの状況を把握できます。

「再アプローチ可能なユーザー」の獲得と関係性構築が重要。オーディエンスはファーストパーティデータが重要になる
再アプローチ可能なユーザーの獲得と関係性構築が重要。ユーザーリストはファーストパーティの方が重要になる
Webサイトのコンテンツ種別の評価視点
Webサイトのコンテンツ種別の評価視点。ミドルファネル(MoFu)の見込み顧客層との関係をどれだけ温められるか

コンテンツマーケティングの評価視点については、下記の記事で詳しく解説しています。

ソーシャルメディアの各プラットフォームは先行きがいろいろと不安定な印象ですが、それぞれのチャネルでユーザーとの関係性を構築しコミュニケーションを温めることはゴールへの近道だと考えます。

まとめ

  • PV拡大ではなく、取り組むべきは「再アプローチ可能なユーザーとの関係性構築」つまりオーディエンスビルディング
  • 関係性構築の把握はユーザーリストで

オーディエンスビルディングについては、詳細を以下の記事で詳しく解説しています。

この記事は、当社の資料『コンテンツマーケティングの戦略設計 – 取り組むべきはオーディエンスビルディング』の内容の1トピックスを記事化したものです。

このコラムは、2023年4月5日発行のニュースレター「真摯レター」のコラムを再編集したものです。ニュースレターの購読はこちらから。


  1. 「読者開発」しないと、良いコンテンツも届かない 【イノベーション・リポート】|メディアコラボ・古田大輔 ↩︎
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