Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングは、あなたが期待しているものとは違うかもしれない

自社のWebサイトを複数のドメインで運用しているとき、Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングを使って包括的な計測を行うことがあります。GA4ではクロスドメイントラッキングの設定が容易なこともあり、導入しているところも多いと思います。

しかし、Googleアナリティクスの導入設定のご依頼時に要件をヒアリングしていると、少し誤った理解をされている人がいらっしゃいます。多くの期待をクロスドメイントラッキングに抱いているようなのですが、そのような仕様ではないですよという説明を差し上げることになります。

目次

複数ドメインでのあらゆるユーザー行動を同一ユーザーのものとして捉えるものではない

Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングは、複数ドメインでのあらゆるユーザー行動を同一ユーザーのものとして捉えるものではありません。あくまで「ユーザーのドメイン間の遷移時に前ドメインのCookieから情報を保持して計測する」というものです。

各ドメインでの行動のみの場合(ドメイン間遷移なし)

例えば、クロスドメイントラッキングの設定が施された「ドメインA」と「ドメインB」があるとします。ここでUser-Aさんが以下のような行動をしたとします。

  • ドメインAのみで行動
  • ドメインBのみで行動

このとき、ドメインAとドメインBをクロスドメイントラッキングで包括的に計測しているWebサイトでは、User-Aさんの計測は「ユーザー数2」になります。「ユーザー数1」にはなりません。

Cookieはドメイン単位で保存される
Cookieはドメイン単位で保存されるため、ドメインAのCookieを持ったユーザーとドメインBのCookieを持ったユーザーに分かれる

User-Aさんによる行動は、計測上は2ユーザーに分かれます。ドメインAのCookieを持ったユーザーと、ドメインBのCookieを持ったユーザーです。クロスドメイントラッキングはユーザーのドメイン間の遷移時に前ドメインのCookieから情報を保持して計測するものであり、ドメイン間遷移がなければユーザーはドメインごとに判別されます。

「複数ドメインでのあらゆるユーザー行動を同一ユーザーのものとして捉える」と誤解していると、ここでつまずきます。「ユーザー」はまずCookie単位で定義、集計されますが、前提としてCookieはドメイン単位で保存されます。

ドメイン間の遷移があった場合

ユーザーによるドメイン間の遷移があった場合、前ドメインのCookieから情報を保持して計測し、遷移先ドメインでの行動も同一ユーザーと判別されます。

ドメイン間の遷移があった場合
ドメイン間の遷移があれば前ドメインのCookieから情報を保持して計測し、上図のUser-Aさんの行動は1ユーザーと判別される

上図でのUser-Aさんによる行動は、1ユーザーとして判別されます。Googleアナリティクスでのユーザーを判別する識別子「cid」は、クロスドメイントラッキングによってドメインAでの値を保持したままドメインBに遷移します。

各ドメインでの行動の後にドメイン間遷移があった場合

ユーザーによる各ドメインでの行動の後にドメイン間の遷移があった場合です。

まず、ドメイン間遷移のセッションより以前の「各ドメイン単独での行動」はそれぞれ別ユーザーのものとして判別されます。「ドメインA→B」のドメイン間遷移のあったセッション以降は遷移先ドメイン(ドメインB)での行動も同一ユーザーのものとして判別されます。そのため下記の状況では「ユーザー数2」になります。

各ドメインでの行動の後にドメイン間遷移があった場合
ドメイン間遷移のあったセッションより以前の「各ドメイン単独での行動」は別ユーザーとして判別、ドメイン間遷移以降は同一ユーザーとして判別される

上図でのUser-Aさんによる行動は、2ユーザーとして判別されます。2回目のセッションであるドメインBのみでの行動は、1回目のセッションであるドメインAのみでの行動と同一ユーザーのものという判別ができません。

3回目のセッションでドメイン間遷移があり、「cid」にドメインAでの値を保持したままドメインBに遷移します。それ以降のユーザー行動は、ドメインAとBいずれにおいても同一ユーザーの判別になります(上図「Anonymous-01」)。

ドメイン間遷移後はcidに遷移前ドメインでの値を保持する

ユーザーは2つのドメイン間を遷移する際に「cid」に遷移前ドメインの値を保持して移動します。そしてそれ以降のユーザー行動でも遷移前ドメインの値を保持するため、同一ユーザーの判別になります。

つまり「各ドメイン単独での行動」の前に「ドメイン間遷移」があれば、それ以降どのセッションにおいても同一ユーザーとして判別されます。

ドメイン間遷移後はcidに遷移前ドメインでの値を保持する
「各ドメイン単独での行動」の前に「ドメイン間遷移」があれば同一ユーザーとして判別

ドメイン間遷移の方向によっては、当初とは異なるユーザーとして判別される

ドメイン間遷移の方向とセッション内容によっては、途中から一番最初とは異なるユーザーとして判別されます。これは「ドメイン間遷移の際にcidに遷移前ドメインの値を保持して移動、それ以降のユーザー行動でも遷移前ドメインの値を保持」という仕様のためです。

ドメイン間遷移の方向によっては、当初とは異なるユーザーとして判別される
ドメイン間遷移の方向によっては、途中から当初とは異なるユーザーとして判別される

「ドメイン単位の計測」と「クロスドメイントラッキング」でユーザー数が変わる

クロスドメイントラッキングを行うことで、計測される数値が変化してしまうという課題もあります。単一ドメインだけで計測したときのユーザー数と、クロスドメイントラッキング時の該当ドメインのユーザー数が変わってしまうというものです。ちょっと表現が難しくて説明が足りていないですね。以下で説明します。

例えば、クロスドメイントラッキングも何もせずに単に1ドメインだけのWebサイトとして計測した場合、User-Aさんの判定は容易です。同一端末の同一ブラウザーである限りCookieは同一なので、下図の例では「ユーザー数1」になります。

ドメイン単位の計測であれば同一Cookieで1ユーザーと判別
一般的な単一ドメインのWebサイト計測であれば、User-AさんのCookieは同一

一方、クロスドメイントラッキングでドメインAとドメインBを包括的に計測した上で、そのデータでドメインAの状況を把握した場合、User-Aさんは計測上は複数のcidの値を持つことになります。下図の例では「ユーザー数2」になります。

クロスドメイントラッキングの場合、単一ドメインでは必ずしも1ユーザーと判別されない
クロスドメイントラッキングの場合、User-Aさんは計測上は複数のcidの値を持つ。そのため該当ドメインだけで見ると1ユーザーと判別されない

クロスドメイントラッキングをしているため「ドメインAのcidを持つUser-Aさん」「ドメインBのcidを持つUser-Aさん」が存在することになり、ユーザー数が増加するというものです。

「クロスドメイントラッキングをしている各ドメインのユーザー数は、各ドメインだけを計測していたときと比較すると増加する」という現象はこれが要因です。

  • ドメインAとドメインBを包括的なWebサイトとして把握したい
  • 各ドメイン単位でも正確に把握したい

この2つの条件をクロスドメイントラッキングは満たさないのです。

ドメインの数が増えると複雑になる

ここまでドメイン2つのケースを例に紹介しましたが、ドメインの数が増えると複雑になります。ドメインA、ドメインB、ドメインCをクロスドメイントラッキングで包括的に計測しているWebサイトでは、User-Aさんは最大「3ユーザー」と判別されることになります。

ドメインの数が増えると複雑になる
ドメイン3つをクロスドメイントラッキングした場合、User-Aさんは最大3ユーザーと判別される

ドメイン間遷移やセッションの順番によってもユーザーの判別は変わってきます。

さて、このようなクロスドメイントラッキングはあなたが期待しているものでしょうか?

クロスドメイントラッキングはどのようなケースで導入するのか

Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングはどのようなケースを想定しているのでしょうか。筆者は以下だと捉えています。

  • Webサイトの一部機能が別ドメインで展開している場合(お問い合わせフォームやeコマースの購入プロセスなど)
  • 複数ドメインだが実質的に一体化した運用のWebサイト(共通のナビゲーションUIを使用しているなど)

グーグルによる公式ドキュメントでは、クロスドメイントラッキングの想定ケースに関しては限られた説明に留まります。明記されているものでは「複数のドメインをまたいで一貫した測定を行う必要がある場合(ウェブサイトとショッピング カートでドメインが異なる場合など)」「カスタマージャーニーが複数のドメインにまたがっている場合」という記述を確認できます。

この記事では、複数のドメインをまたいで一貫した測定を行う必要がある場合(ウェブサイトとショッピング カートでドメインが異なる場合など)の設定方法を解説します。

[GA4] クロスドメイン測定のセットアップ – アナリティクス ヘルプ

クロスドメイン測定を利用すると、別々のドメイン上にある複数の関連サイトをまとめて測定できます。Google タグには、カスタマー ジャーニーが複数のドメインにまたがっている場合に、サポートされているサービスでアクティビティを測定するための方法が用意されています。

複数のドメインをまたぐアクティビティを測定する  |  Tags  |  Google for Developers

一方で、自社が運用する複数のWebサイトは互いにリンクで接続されていることがあります。上記で説明した仕様を知らなければ、「じゃあ所有する10個のWebサイトをすべてクロスドメイントラッキングすれば、全体的なユーザーの動きがわかるのでは!?」と思うかもしれません。記事の冒頭で「多くの期待をクロスドメイントラッキングに抱いているようなのですが」と書きましたが、これに該当します。

悪いことは言いません。「10個あるWebサイトをクロスドメイントラッキングすれば全体的なユーザーの動きがわかる」というのは幻想です。もちろん得られるものもあるかもしれません。しかし、容易に判別できたものが把握しにくくなったり、実態から割り増しされたり、レポートのサンプリングがかかりやすくなったりといった欠点の方が多いです。

複数のWebサイトで目的も対象も異なるのであれば、クロスドメイントラッキングを積極的にすべきではありません。そもそも「自分たちはなぜそれらを異なるドメインで運用しているのか」を踏まえるべきです。複数Webサイトのドメイン設計が誤っているのであれば、その解決としてクロスドメイントラッキングに多くを期待しても、解決には至りません。

ケース別の目安
クロスドメイントラッキングの適用は「Webサイトの一部機能が別ドメインで展開している場合」「複数ドメインだが実質的に一体化した運用のWebサイト」に留まった方がよい

3つ以上など複数のドメインをまたいだ長いカスタマージャーニーの計測を想定しているのであれば(セッションの長さとしても、長い時間軸としても)、クロスドメイントラッキングはあまりその解決にはならないということです。「10個以上のWebサイトをクロスドメイントラッキングしたい」という要望がもしあれば、それはドメイン設計が誤っているか、Googleアナリティクスにオーバースペックな期待を寄せているかのどちらかです。

まとめ

  • Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングは、複数ドメインでのあらゆるユーザー行動を同一ユーザーのものとして捉えるものではない
  • 「ドメイン単位の計測」と「クロスドメイントラッキング」でユーザー数が変わる
  • クロスドメイントラッキングの適用は「Webサイトの一部機能が別ドメインで展開している場合」「複数ドメインだが実質的に一体化した運用のWebサイト」に留まった方がよい

内容の一部誤りをご指摘いただき、修正と更新を行いました。ご指摘いただきありがとうございました(2024年4月25日)。
https://twitter.com/kaori_moto/status/1783021636201124051

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