集客力から求心力へ。2026年のコンテンツマーケティングを考える
先日、ロイター・インスティテュートの発表したメディア業界の動向予測の調査レポートを読みました。世界各国のメディア関係のリーダーへのアンケート調査を元に毎年発表しているレポートです。
ここではこのロイター研究所のメディア予測レポートを起点に、リーチや拡散から「求心力と関係性構築」へ転換するコンテンツマーケティングの方向性を考えていきます。
2026年メディア予測レポートが示す転換点
このレポートには非常に多くのトピックスがあるのですが、主要なトピックスをコンパクトに挙げるとこんな感じになるでしょうか。
- トラフィック大幅減少の懸念
- Googleゼロクリック検索などの影響
- コンテンツの独自性へのシフト
- 「現場、ライブ」「独自視点」「人間味のあるストーリー」。文脈やプラットフォームに柔軟に適応させる「リキッドコンテンツ」
- ジャーナリストのクリエイター化
- パーソナリティを前面に出したコンテンツ配信の強化。背景にはSNSの動画化と非ソーシャル化
英語で長文のレポートです(PDFあり)。私はNotebookLMやNani翻訳の力を大いに借りながら、概要を理解したり興味あるトピックスを掘り下げたりして時間をかけて読みました。興味のある人はご覧になることをおすすめします。
この記事の末尾にて、資料の解説をしている記事をいくつか紹介しておきます。123
さてこのレポートを読んで、コンテンツマーケティングの観点から注目したトピックスは以下のとおりです。
- プラットフォーム依存からの脱却
- オーディエンスとの関係性の強化
- パーソナリティと信頼獲得
- 誰が発信しているか、人間味と人格による差別化
- 組織から個人へのシフト、発信者のクリエイター化
- 情報摂取から体験やコミュニティへの可能性
- 情報の消費から実社会での体験へ
- コンテンツの独自性と深さの追求
- コモディティ化の回避、独自の価値
この中で特に「1. プラットフォーム依存からの脱却」「2. パーソナリティと信頼獲得」のトピックスを掘り下げて理解していたとき、そういえばかつて「分散型メディア」と呼ばれた手法(戦略?)があったことを思い出しました。
「分散型メディア」とは何だったのでしょうか?
かつての「分散型メディア」とは何だったのか
「分散型メディア」と一部の界隈で当時もてはやされたこの考え方は、コンテンツを自社サイトに集約せず、SNSやYouTubeなどプラットフォーム上にネイティブ配信して情報流通を伸ばすというものでした。主な目的はリーチとフォロワー獲得です。
調べてみると2015年前後から日本では話題になり始め、2019年頃までニュースや記事で登場しています。参考までに、2015年のガイアックスさんの記事を挙げておきます。
いくつかの側面ではいまでも通じる考え方でもありますが、「分散型メディア」という表現では呼ばれなくなりました。Googleトレンドのグラフを見ると、2016年~2017年がピークでしょうか。

何が引き継がれ、何が変わったのか
「分散型メディア」と呼ばれなくなったものの、2026年現在のコンテンツマーケティングの考え方との共通項はあります。
そこで、共通項と違いを整理してみます。違いにはロイター・インスティテュートの調査レポート内容も踏まえています。
- コンテンツの価値は「作る」だけでなく「届く」まで含めて設計
- フォーマットの最適化。プラットフォームごとの勝ち筋に合わせる(画像、動画、テキスト、ライブ等)
- プラットフォームというよりも、発信者や編集方針、人格への信頼で継続接触が生まれる
- 目的が「リーチ」から「文脈+継続接触」へ
- 2016:プラットフォームで伸びれば勝ち筋。フォロワー数=将来のリーチが読めた
- 2026:外部プラットフォームからのリーチやクリックが読めず、「再訪/指名/登録/コミュニティ参加」に重心が移動。オーディエンス作りへ
- AIの関与
- プラットフォームは配信面であるだけでなくAIを介して要約や回答として中間に立つ。表示や参照がされてもクリックはない
- 勝ち筋が「拡散」から「分散×自前のポートフォリオ」へ
- 2016は単なる分散だったが、2026は複数面に分散しつつも、自前の接点での直接関係を太くするのが合理的
ソーシャルメディアとコンテンツの現在地
2016年といえば、ソーシャルメディアは活況でした。Twitterは全盛期と言っていいでしょう。Facebookでは多くの人が投稿や会話を楽しみ、Instagramでは企業アカウントが増えて広告運用が日本でも普及し始めた時期でした。2014年に「好きなことで生きていく」とキャンペーンを打ったYouTubeでは「ユーチューバー」が大きく増加した時期です。
そして2026年。ソーシャルメディアの様相は大きく変わりました。TwitterはXになってしまい、Facebookは落ち着いた状態になりました。どのソーシャルメディアも「おすすめ」中心でフォローユーザーの投稿はなかなか見られず、TikTokの興隆とともにショート動画も増えました。広告は増加し、オーガニックなリンク付き投稿はプラットフォームから敬遠されるようになりました。
ソーシャルメディアはいわば「非ソーシャル化」し(交流の場からインフルエンサーコンテンツを楽しむ場に変わった)、「いかにプラットフォーム内に滞在してもらうか」視点の仕様変更が多く加わりました。
いちしま泰樹いまのソーシャルメディアは「インフルエンサー」のコンテンツ流通をメインストリームとして成り立っている状態といえます
求心力を高めるための5つのヒント
そのような変化の中、ロイター・インスティテュートの調査レポートの内容を踏まえつつ、2026年のAI時代のコンテンツマーケティングあるいは「分散型メディアのその後」として、どのような方向性や模索をすべきかを挙げてみます。
- 「名簿化/再訪化」の設計。各チャネルでの発見性や拡散性は残しつつどこかで自前の接点を案内。表示やPVよりも次回接点を意識(登録/購読/指名検索/リピート)
- ライブやコミュニティの「関係性の場」の可能性。小さく始める、参加理由を作る、「参加→投稿→共同制作→紹介」の行動設計
- 組織よりも個を前面に出す価値の可能性。ただし属人化やリスク管理の必要あり
- KPIに関係性軸の追加を。流入軸中心からの組み替え
- 集客力から「求心力」へ。リストなど自社管理資産が競争力に
ファネルからオービットへ。周回するユーザーとの関係づくり
検索やソーシャルメディアや実社会を含めて、企業はユーザーとつかず離れず接点を維持しつつも、良きタイミングで引き寄せてみる。そういった「企業を中心にして回りをぐるぐる周回するユーザーにどうやって近づいてもらうか」という視点の取り組みが、今後のコンテンツマーケティングの一つの考え方かなと捉えています。


私はファネルの考え方は今後も一定の有効性を持ち続けると思っていますが、とはいえファネルは直線的でステップ管理のモデルです。例えば、周回や軌道を表す「オービット型」のような視点でユーザーとの関係を捉え(彼ら彼女らは遠ざかったり近づいたりする中)、打ち手を考えるのも悪くないはずです。


ファネルではリーチが重要となり、離脱を減らしてコンバージョンを目指すという思想です。一方オービットでは遠ざかったり近づいたりして周回するユーザーをどう引き寄せるか、という思想になります。このとき関係構築が重要になりますが、CVR最適化や効率で引き寄せるのではなく、信頼獲得や帰属意識醸成を伴った「求心力」で引き寄せることが求められます。いまどきのコンテンツマーケティングにマッチすると感じます。



企業や属するメンバーが「求心力」を持ってある意味「インフルエンサー的ポジション」になる必要がある、ということでしょう
さて、そろそろ締めることにしましょう。リーチや拡散が「勝ち/価値」だったコンテンツマーケティングは機能しにくくなり、どうやって価値ある存在として認めてもらい関係を深められるかという方向に向かっているのは間違っていなさそうです。


バズるから帰属意識の醸成へ、集客力から求心力へ。
ところで最後まで言わないようにしていましたが、2016年って10年前なんですよね……。


- AI転換点に立つジャーナリズム:2026年におけるトラフィック喪失、クリエイター台頭、そして独自性の戦い – 海外SEO情報ブログ ↩︎
- ロイター研究所「2026年の予測」、検索トラフィック「43%減」の衝撃、「アトミックコンテンツ」への移行 – Media Innovation ↩︎
- Web担当者Forumにてロイター・インスティテュートのレポートの翻訳記事が公開されています。4記事に分かれています。
2026年のジャーナリズム・メディア・テクノロジー:主要トレンドと未来予測 | ユーザーに届くSEO | Web担当者Forum ↩︎
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