コンテンツマーケティングの評価軸に指標「ページに1分滞在 (One-minute view)」を加える

先日(2024年12月)、「Think with Google」の2024年人気記事振り返りを見かけました。

記事を読んでいると、選出基準にはページビューではなく「エンゲージメント率」が用いられていることに気付きました。エンゲージメント率はここでは「75%スクロール、1分以上滞在、記事中動画再生」のいずれかがトリガーになっているようです。同サイトの2023年や2022年の人気記事振り返りでも、同様の基準が使われていました。

「ページに1分滞在」は過去に他所で計測例を見かけた記憶もあります。改めて悪くない指標に感じました。そこで当社のWebサイトでも「1分以上滞在したページビュー」を計測し、指標「One-minute view」として扱えるようにしました。Googleアナリティクス的な日本語の指標名で表すと「1分滞在表示回数」といったところでしょうか(しっくりきませんが)。

目次

記事単位のシンプルな評価指標としての有用性

目的は、「コンテンツマーケティングの記事単位のシンプルな評価指標として扱いやすいか」を確かめることです。

まず、当社のWebサイトではページレベルで次の値をすでに計測し指標化しています。

  • コンテンツ末尾到達数(指標化)
  • CTAクリック数(指標化)

ここに新たに「ページに1分以上滞在」の計測を追加したことになります。

これ以外にも以下の計測もしていますが、話が広がってしまうので紹介だけに留めます。いずれもページで期待するユーザーのエンゲージメントです。

  • 記事内リンククリック数(指標化)
  • 関連記事リンククリック数(指標化)
  • シェアボタンクリック数(指標化)

GoogleアナリティクスとGoogleタグマネージャでの設定例は、記事の後半で紹介しています。

多面的なページの把握ができるように

これでページごとのエンゲージメントを以下3つの指標を軸に把握できるようになりました。

  • ページに1分以上滞在:ユーザーを一定時間惹きつけたページビュー
  • コンテンツ末尾到達:ユーザーを最後まで惹きつけたページビュー
  • CTAクリック:ユーザーの行動喚起

計測を開始して約2カ月間。「ページに1分以上滞在」を表す指標「One-minute view」は良い感じです。実際の把握ではOne-minite viewの割合を示す指標「One-minite view rate (1分滞在表示率)」として扱っていますが、Webサイトの記事コンテンツ領域で約70%、突出したページを除けば約60%です。ページごとに内容や文字数が異なるため、当然ばらつきがあります。

Looker Studioでレポートを作成し、ページごとの各指標のデータ表に「1分滞在表示率」「コンテンツ末尾到達率」などを揃えることで、俯瞰で各ページの状況をより多面的に把握できます。

Webページのパフォーマンス分析データを表形式で示したもの。各ページの表示回数、平均エンゲージメント時間、1分滞在表示率、コンテンツ末尾到達率、リンクのCTR(クリック率)などが数値とともに示されています。
Looker Studioで表したデータ表の例。各ページの表示回数とともに、1分滞在表示率やコンテンツ末尾到達率、CTAクリックの状況をまとめて把握できる

Webサイトによっては率の指標ではなく指標「One-minute view」のままで扱っても良いかもしれません。

以前作成した資料で示すと、他の指標も加えて概ね「青い線」の領域をざっくり把握できた状態です。

エンゲージメント獲得のプロセスを示す図。関係性の分岐点を意識し、ユーザーの行動を認知から推薦まで段階的に説明したもの。青い線は、閲覧/利用、理解、反応、関連コンテンツアクセス、関係性を持つのプロセスを含んでいる
閲覧/利用、理解、反応、関連コンテンツアクセス、関係性を持つのエンゲージメントを概ね把握できる

「理解」「反応」「関連コンテンツアクセス」「関係性を持つ」のエンゲージメントを、ページ単位である程度把握できています。

設定例

GoogleタグマネージャとGoogleアナリティクスでの設定内容を簡単に紹介しておきます。Googleタグマネージャ側でページ上に1秒滞在でイベントを発生させ、その値をもってGoogleアナリティクス側で指標化するという指定です。難しい内容ではありません。

トリガーの準備

Googleタグマネージャのタイマートリガーを準備し、以下の指定をします。

  • 間隔:60000(60秒に該当するミリ秒)
  • 制限:1(該当ページで繰り返し発生しないように回数上限は1回)
  • 対象ページの条件を指定(ここではPage Hostnameで全ページを指定)
Googleタグマネージャでのタイマートリガーの設定例
Googleタグマネージャでのタイマートリガーの設定例

GA4イベントタグの設定

続けてGoogleタグマネージャでGA4イベントタグを準備し、下記の設定にて先ほどのタイマートリガーをトリガー指定します。

  • イベント名:任意の名称(ここではtimer_1min
  • イベントパラメータ:(ここではone_min_view_countで数字の1を発生)

イベント名やイベントパラメータ名の先頭は「英字」である必要があります。

GoogleタグマネージャでのGA4イベントタグの設定例
GoogleタグマネージャでのGA4イベントタグの設定例

Googleアナリティクス側でカスタム指標を準備

Googleアナリティクス側でカスタム指標を設定して指標化します。

  • 指標名:任意の名称
  • 範囲:イベント
  • イベントパラメータ:先ほどのGA4イベントタグで指定したイベントパラメータ名
  • 測定単位:標準

カスタム指標名では「英数字とスペースとアンダースコアのみ使用可、かつ先頭は英字」である必要があります。

Googleアナリティクスのカスタム指標の設定例
Googleアナリティクスのカスタム指標の設定例

シンプルなわかりやすさと有用性

今回は、「One minute view (1分滞在表示回数)」という指標が「コンテンツマーケティングの記事単位のシンプルな評価指標として扱いやすいか」を確認したい、というのがきっかけでした。

「シンプルで一定のわかりやすさ」「ページビューよりも有用な可能性」を備える一方で、「計測しにくい重要な要素を単純化しすぎている感」もあります。それは他の指標で補完する必要があります。

いったんは「コンテンツ単位でどのように閲覧や利用がされているか」として運用できそうです。

コンテンツマーケティングは長期的な取り組みです。限られたリソースで評価やモニタリングを行う企業が多く、計測や分析に十分な予算や時間を割けないのが現実です。その中で、当社がどのようにサポートできるかを考えています。今回のケースはショーケースでもある当社Webサイトでの例です。取り組みの参考になればと思います。

株式会社真摯では、コンテンツマーケティング視点でのGoogleアナリティクスの導入や計測設定の支援を行っています。

このコラムは、2024年12月19日発行のニュースレター「真摯レター」のコラムを再編集したものです。ニュースレターの購読はこちらから。

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