顧客層に近いデータに重きを置きながらAIに備える – アクセス解析の転換点
「アクセス解析ではどんな視点で取り組むのが良いですか?」 少し前に、雑談から軽い相談をいただきました。その人はアクセス解析に関わることはあれど本格的に取り組んではいない、という人です。
ひとことで答えるには難しい質問です。GA4の使い勝手の課題も関係しているかもしれません。「2025年ではどんな視点が」を意識すればなおさら答えに迷います。
いろんな視点があって良いはずです。「コンバージョンに近いところから」「最初の接点からユーザー軸で」「どのような意図や目的を抱えているか」「森から枝葉へ」などはセオリーだと思います。
顧客層に近いデータに着目すれば、顧客層や期待する行動の定義に意識が向く
そんな中で私は「顧客層に近いデータから着目してみては」と挙げてみました。コンバージョンに至ったユーザーやログイン会員、ニュースレター購読者などのデータだけでなく、その周辺のユーザー層、特定のコンテンツ閲覧や期待するアクションを行ったユーザーのデータにまずはフォーカスするというものです。
顧客層に近いデータに着目すると良い点は、「顧客層」や「期待する行動」の定義に意識が向くことです。ビジネスの対象としている顧客層はどのようなユーザーでどのような属性を持っているか、どのようなアクションをすれば「顧客層に近い」のか、ユーザーの属性データを取得して紐付けられないか、期待するアクションはどう計測すれば実態に近いか、などさまざまなアイデアが出てきます。分析だけでなく、必要なデータの計測の視点が持てるのも良いところです。

そして「特定のユーザーグループはセグメントで抽出できるか」などを経て、期待と実際の差を分析していく方向に向かうことができます。計測面でも「とりあえず思いつくデータを計測しておこう」から「定義した重要なデータから計測しよう」という視点に向きやすいです。
顧客層に近いデータへの着目は、ファーストパーティデータともリンクします。データはアクセス解析のような行動データだけでなく、顧客層に対してリサーチやアンケートを取ることで得ることもできます。他ツールとアクセス解析ツールのデータを統合することもできます。ファーストパーティデータは今後の分析の鍵を握る要素の一つです。
レガシーな手法のアクセス解析は割に合わなくなってきた
ところで、かつて全数データを概ねきちんと取得していたWebサイトのアクセス解析データは、ITPやCookie同意、ツールによるサンプリング処理などによって期待していたものではなくなってきました。依然として重要で貴重なデータに変わりはありませんが、一部ユーザーのデータを取得できなかったり、特定環境のユーザー特定が難しくなったり、サンプリングを考慮しながら扱わなければいけません。そうすると得られたヒントをどこまで信用して良いのかとなってしまいます。
仮説を元に特定の条件でセグメントやクロス集計などをし、それをくり返してヒントを得ようとする「従来からの丁寧なアクセス解析」の過程は、こうして不確定要素が増えるにつれて煩雑になりました。GA4の使い勝手の件もあって分析の手数が増えたにもかかわらず、得られるヒントが限定的なケースもあります。レガシーな手法のアクセス解析は割に合わなくなってきた、と感じます。
その中で「まずは顧客層に近いデータに着目する」という視点は改善の近道であることが多く、まだ成果を出しやすいです。自社にとって重要だと捉えているユーザーやトラフィックを優先するのは、初級者に向けた道案内としては悪くありません。
一方で、AIのソリューションは積極的につまみ食いしておきたい
一方で、顧客層に近いデータは全体の一部に過ぎません。それ以外の大多数のデータにも課題は潜んでいます。
そこでAIのソリューションには常に注目しておきたいです。あわよくば取り入れられないかと積極的につまみ食いしておきたいです。AIが得意とするのはこういった「きっとヒントがあるはずだが手掛かりが少なくて人力では取り組みたくない領域」です。データから手掛かりやパターンを見つけ出し、新たなヒントを提示してくれるはずです。
こういったソリューションが実用的になるのはもう少し先かもしれません。しかし「ある日突然できる子が登場する」のではなく「先行者が積極的に取り入れていたソリューションが、気付けば有効な手段になっていた」という世界線だと思います。
私たちがアクセス解析から得たいのは改善や今後の方向性のヒントです。「GA4ももう少し扱いやすくなれば」という不満を心にためながらも、いましばらくは顧客層に近いデータに重きを置きつつ、残りのデータとAIの可能性を横目でチラチラ眺めながら取り組む2025年だと思います。少しずつ重心をずらしていく意識で向き合いたいです。