CVユーザーを理解する5つの分析軸
Webサイトや集客の改善を進める上で、「コンバージョンに至ったユーザーの理解」は重要な取り組みです。コンバージョンに至らなかったユーザーと比較して、行動にどのような違いがあったのか、そのきっかけやヒントをつかむことで、「ユーザー動線の改善」や「貢献コンテンツの発見」、「シナリオへの反映」につなげられます。
ここでは、コンバージョンに至ったユーザー(以下、CVユーザー)を理解する基本の分析軸として、5つの観点を紹介します。
1. コンバージョンまで何日かかったのか、何回訪問したのか
所要期間
コンバージョンに至るまでに何日かかったのか、Webサイトに何回訪問したのかという要素は、ユーザーの意識や行動の変化、検討期間を推測するのに役立ちます。
初回訪問からコンバージョンまで何日かかったのかは、Googleアナリティクスであれば[コンバージョン>マルチチャネル]にある「所要期間」のレポートで確認できます。
「所要期間」レポートでは、対象のコンバージョンを選択し、ルックバックウィンドウで日数を指定して利用します。ルックバックウィンドウの日数は、「ユーザーがコンバージョンした日から過去何日前の訪問までさかのぼって対象にするか」を指定します(最大90日)。
レポートそのままでもインプットは得られますが、例えば日数をグルーピングし直してエクセルで円グラフにすれば、「CVユーザーの約7割は初回訪問から7日以内にコンバージョンに至る」「CVユーザーの23%は初回訪問からコンバージョンに至るまでに1か月以上かかる」というように、新しい発見も得られます。
経路の数
初回訪問からコンバージョンまで何回訪問したのかは、[コンバージョン>マルチチャネル]にある「経路の数」レポートで確認できます。経路の数はコンバージョンに至るまでのユーザー接点の数のことで、訪問回数(セッション回数)と実質は同じものです。
「経路の数」レポートも同様に、対象のコンバージョンを選択し、ルックバックウィンドウの日数を指定して利用します。
こちらも、経路の数をグルーピングして円グラフにすれば、「CVユーザーの70%は初回訪問から2回の訪問以内にコンバージョンに至る」というような新たな発見を得られます。
複数回のコンバージョンが発生するサイトでは適していない
この「所要期間」「経路の数」は、ECでの購入など「1ユーザーあたり複数回のコンバージョンが見込まれるサイト」では、残念ながら「初回訪問からの初回のコンバージョンまで」を把握することができません。レポートの仕様上、複数コンバージョン時の前回コンバージョンからの所要期間と経路の数も対象に含まれていることと、「初回のコンバージョン」だけをコンバージョンセグメントで抽出できないためです。初回コンバージョンだけを特定の目標設定にしていれば、把握は可能です。
3か月以上の長期検討商材は少しむずかしくなってきますが、会員登録や資料請求、BtoBでのお問い合わせなどの多くは、上記の「所要期間」「経路の数」を活用できます。
2. 初回訪問のきっかけ(起点と流入元)
CVユーザーの初回訪問時の参照元や起点のランディングページからは、最初のきっかけを知ることができ、集客キャンペーンに反映できます。
CVユーザーの初回訪問時の参照元やランディングページの状況は、いくつかの方法で取得できます。例えば「CVユーザーの初回セッション」といったセグメントを新規作成すれば、活用の幅が広がります。
「CVユーザーの初回セッション」のセグメントでレポートの期間を3か月間にし、参照元やランディングページを確認します。別途「非CVユーザーの初回セッション」のセグメントも作成して両者を比較すれば、非CVユーザーとの行動の差からその要因も探れます。
3. CVユーザーの直近1か月の閲覧ページ
CVユーザーの直近1か月間の閲覧ページの状況は、どういったコンテンツがコンバージョンに寄与しやすいのかを推測する手掛かりになります。
「CVユーザー」と「非CVユーザー」で両者の閲覧ページを比較し、行動の差からCVに貢献するコンテンツを探ります。
フォームなどCVプロセスに関わるページやキャンペーン向けLPは、必然的にCVユーザーが多く利用するコンテンツになるため、リストアップの際に外すなどの考慮が必要です。
標準のセグメントで「コンバージョンに至ったユーザー」「コンバージョンに至らなかったユーザー」が準備されていますが、自社サイトの状況に応じて必要なコンバージョンだけを対象にしても良いです。
4. 2度目訪問時の行動の変化(起点、閲覧ページ)
多くのCVユーザーが複数回の訪問を経てコンバージョンに至っているのであれば、2度目の訪問時の行動が初回からどのように変化しているのかを確認してみましょう。商材に対する興味関心が強くなっていれば、行動に変化が起きている場合があります。
「CVユーザーの2度目のセッション」と「CVユーザーの初回セッション」の行動を比較し、行動の変化からユーザーの意識の変化を探ります。想定していたシナリオの範囲内なのか、想定していない行動が見られないかなどをチェックします。
「CVユーザーの2度目のセッション」と「CVユーザーの初回セッション」で、起点であるランディングページや閲覧したページに変化が生じているかを確認していきます。特徴的なコンテンツが抽出できれば、ユーザー動線の見直しやシナリオ設計に反映していきます。
コンバージョンまでの訪問回数が多いサイトであれば、「CVユーザーの3度目のセッション」というようにいくつかの「n度目」のセグメントで確認しても良いかもしれません。
5. 流入チャネルの貢献度(アシストコンバージョン)
CVセッションの際の参照元を見るラストクリック型(終点型)のモデル視点だけでなく、初回訪問から最後のCVセッションに至るまでに接した各流入チャネルの貢献度を理解することは、CVユーザーの理解として重要な取り組みです。
どのチャネルが最初の認知の役割を担っているのか、最後のコンバージョン時以外に接点として大きく貢献しているチャネルがあるかどうか、意図した役割と乖離しているものはないか、といった発見があります。
Googleアナリティクスであれば、[コンバージョン>マルチチャネル]にある「アシストコンバージョン」レポートで、チャネルの役割とコンバージョン貢献度がアシスト接点や起点軸で確認できます。
アシストコンバージョン数
指標としての「アシストコンバージョン」は、ラストクリックコンバージョン(終点コンバージョン)を除いた初回から途中の接触で貢献したコンバージョン数のことです。
起点コンバージョン数
指標としての「ファーストクリックによるコンバージョン数」は、初回の接触で貢献したコンバージョン数のことです。指標名が長いので、個人的には「起点CV数」と呼んだりします。
貢献コンバージョン数
「アシストコンバージョン」レポートにおける指標「コンバージョン数」はやや特殊で、ファーストクリック(初回)からラストクリック(終点)までのすべての接点で貢献したコンバージョン数の総数のことです。ややこしいので、個人的には「貢献CV数」と呼んでいます。
「アシストコンバージョン」レポートの各タブの内容を、例えばエクセルで表にまとめると、各チャネルの役割が可視化されて、意図した役割を担えているか、気付いていない役割を持っているかなどの発見につながります。
「起点CV数/終点CV数」「アシストCV数/終点CV数」の指数は、そのチャネルが起点の役割が強いのかアシストの役割が強いのかどうかを把握する一助になります。
鍵となるコンテンツや流入元の発見からユーザー動線改善、シナリオ反映へ
CVユーザーを理解する基本の分析軸として、5つの観点を紹介しました。
CVユーザーとしての行動の変化、非CVユーザーとの行動の違いを把握し、鍵となるコンテンツがあればユーザー動線の改善やシナリオへの反映につなげていきます。コンテンツの強化や各接触チャネルの施策のヒントにもなるでしょう。
もちろん、上記をベースに顧客属性なども組み合わせて分析を掘り下げていきます。
例えば1年おきにCVユーザーの行動に変化が起きていないかを把握し、年間計画や中期的な計画につなげていくといったサイクルも考えられます。自社の顧客理解の一環として、定期的に取り組むことをおすすめします。