ユーザー動線分析は、重要なユーザー動線の発見ではなく、想定ユーザーシナリオとの差をまずは確認すべし

ユーザー動線分析は、重要なユーザー動線の発見ではなく、想定ユーザーシナリオとの差をまずは確認すべし

ご相談でも多くいただくWebサイトの「ユーザー動線分析」。ご相談いただいてもそれ以前の山積み課題のために実施しないことも多々ありますが、実際に取り組む際には、ご相談とは少し異なるところからスタートすることがほとんどです。

なぜか皆さんやってみたがる「ユーザー動線分析」、もし取り組むとしても、最初にやるべきは「期待と現実の差の確認」と「期待する動線を阻害する課題の解決」です。「重要なユーザー動線を発見しよう」などと思わないことです。

記事の内容はユニバーサルアナリティクスのバージョンによるものです。GA4では手法は異なりますが、視点は変わりません。

目次

重要なユーザー動線やゴールデンルートの発見?

企業様から、Webサイトやその周辺の分析と改善のご相談をいただくとき、「ユーザー動線を分析してほしい」とまずはいただくことがあります。

少し身構えるご相談です。「ユーザー動線の分析」のニュアンスや意図が、わかりにくいからです。よくよく聞くと、多くの場合「太いユーザー動線、重要なユーザー動線、ゴールデンルートを発見して、それを伸ばしたい、太くしたい」というニュアンスだったりします。

さらにヒアリングを進めると、「これまでユーザーの動きを把握してこなかったので、知りたい。もし重要なユーザー動線があれば、それを重点的に伸ばしたい」とおっしゃいます。
※ここでは、Webサイトに流入して離脱までの行動をユーザー動線としています

違うのです。違うと思うのです。

最初にやるべきは「期待と現実の差の確認」と「期待する動線を阻害する課題の解決」

これまでユーザーの動きを把握してこなかったのであれば、最初にやるべきことは決して「ユーザー動線の発見」ではありません。まずは「想定しているユーザーシナリオ、期待しているユーザーシナリオと、実際のユーザーの動きがどれだけ異なるか」を見ることです。期待と現実の差の確認です。

そして、その差は何が理由なのか、それは悪い状況なのか、悪い状況ならどうすれば想定に近づけられるか、などを分析したり、改善案を試したりというステップに移ります。「期待する動線を阻害する課題の解決」です。

「想定していること」と「実際に起きたこと」の違いと原因を分析することから始まる
「想定していること」と「実際に起きたこと」の違いと原因を分析することから始まる

基本的にはこの「期待と現実の差の確認」と「期待する動線を阻害する課題の解決」で、改善活動としては進むはずです。

「差の確認」や改善案の取り組みの課程で、「動線を発見」することもある

この「想定ユーザーシナリオとの乖離の確認」や、改善案を試す課程の中で、まれに「案外、別のこのユーザーの動きも、良いかもしれない」と気が付くことがあります。

それは、想定していなかったユーザーの動きの場合もありますし、認識していたけれども重要視していなかったものもあります。そして、その「もしかしたら重要かもしれないユーザー動線」を伸ばす取り組み「も」スタートさせる、という流れになります。そのステップがおそらく「ユーザー動線の発見」のステップでしょう。でも、まだ重要かどうかまでは判断できません。

これまでユーザーの動きを把握していなかったのに、突然「重要なユーザー動線の発見」などできません。そもそも、何の前提や基準もなしに「これが重要なユーザー動線です」と簡単に判断はできません。

期待するアクションを誘発していると確認できて初めて、そのユーザー動線は重要だと判断できます。いくつかのテストの結果を経てそう判断することになります。

ユーザー動線の把握はざっくりと、できればページをグルーピングしてコンテンツ単位で

また、ユーザー動線の把握は、ざっくりやるべきです。

ページ単位でユーザー動線を把握しようとすると、多くの場合は破綻します。ユーザーの行動はまちまちで、ページ単位で「次に閲覧したページ、その次に閲覧したページ、その次に……」と行動を分岐して捉えていくと、すぐに「何千通り、何万通り」のバリエーションがあることに気が付くはずです。

ページ単位でユーザー動線を把握しようとすると、分岐が膨大になり、破綻する
ページ単位でユーザー動線を把握しようとすると、分岐が膨大になり、破綻する

ページ単位で把握するのであれば前後の遷移のレベルまで、ページをグルーピングしてコンテンツ単位で把握できる状況であれば、もう少し長い2~3レベルの遷移か、「ファネル」のような形で、ユーザーの動きをパターンに分けていくことになります。

ページをグルーピングすれば、前後の遷移が俯瞰できるようになる
ページをグルーピングすれば、前後の遷移が俯瞰できるようになる
ページをグルーピングすれば、少し長い遷移レベルで、ユーザーの行動意図が推測できるようになってくる
ページをグルーピングすれば、少し長い遷移レベルで、ユーザーの行動意図が推測できるようになってくる

これらを、さらにユーザーをセグメントして、見ていくことになります。

最初から「重要なユーザー動線を発見しよう」などと思わないことです。まずは「こう動いてほしかったんだけれども、実際はどうなんだろうか」という視点で見ていくと、新しい動線の発見の前に、期待している動線を阻害する課題が見えてくるはずです。まず着手すべきは、その「期待する動線を阻害する課題」です。

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