「ファーストビュー離脱」でLPの課題を分解する
「ランディングページ(LP)のCVRが低いから改善しよう」と取り組みを進めようとするも、何から手を付けるべきか優先順位がわからない。そんな経験はないでしょうか。私はあります。
「LPのエンゲージメント率は低いのに(直帰率は高いのに)なぜかCVRはそこそこある」「CVRが悪いからフォームを改善したが何も変わらなかった」「ヒートマップで見るとファーストビューが弱そうだが、定量的に追えない」。これらは問題がどこにあるかを切り分けられていないことに原因があります。
本記事では、ファーストビューで離脱したかを判断できる「ファーストビュー通過」をGoogleアナリティクスで計測し、ファーストビュー通過率と通過後CVRの2軸で課題を分解する方法を解説します。この分析視点を使うことで「ファーストビューに課題があるのか」「それ以降に課題があるのか」が明確になり、改善の優先順位を定められます。
いちしま泰樹「CVRが低い/エンゲージメント率が低い」だけではLPの課題を分解できません。「ファーストビュー通過」を計測して分析に役立てていきます
なぜGAでファーストビュー通過を計測するのか
ページの課題を把握する手段として、ヒートマップツールを使っている人も多いでしょう。ヒートマップは便利で優秀なツールですが、運用面での難しさもあります。
ヒートマップツールは個別ページの詳細分析に優れています。一方で「複数ページの比較」「流入元や別デバイス別の比較」には手間がかかります。10本のLPがあれば10回ヒートマップを開いて目視確認し、さらに条件別の比較をする必要があります。「時系列での数値変化の把握」も難しいです。
一方、Googleアナリティクスで計測すれば以下が可能になります。
- すべてのページを同じ基準で比較できる:ファーストビュー通過率という指標で全ページを一覧化し、課題の大きいページをすぐに特定できる。「広告A経由のLP1は通過率30%でLP2は通過率65%、広告B経由では云々」といった比較が一つのレポートで完結する
- 流入元別やデバイス別の分解が容易:GAのディメンションを使えば、「このLPはモバイルだけファーストビュー通過率が低い」「自然検索経由は問題ないが広告経由は通過率が低い」といった切り口を容易に把握できる
- 時系列での変化を追える:改善施策の実施前後でファーストビュー通過率がどう変化したかを、期間比較やA/Bテストで継続的に追跡できる
- CVRとの掛け合わせ分析ができる:ファーストビュー通過率だけでなく「ファーストビュー通過後CVR」という指標で把握することで、初期の合意形成とその後の問題を分離できる
指標「ファーストビュー通過率」の価値は、ページの課題を分解できることにあります。そしてGoogleアナリティクスで計測する価値は、指標の数値による全体把握と比較の容易さにあります。
まずGoogleアナリティクスで「どこに課題があるか」のあたりをつけ、深掘り分析の段階でヒートマップツールを使う。この順序は効率的です。



どのようにGAでイベント計測するかや指標化、レポートでの使用例に関しては別記事で解説しています




この記事での「ファーストビュー通過」の定義
用語の曖昧さを避けるため、まず定義を明確にします。
本記事では「ファーストビュー通過=ブラウザーの最初の表示領域を超えるスクロール」とします。ユーザーによるページの読み込み後、しきい値を超えるスクロールが発生した時点をGoogleアナリティクスのイベントで捉えます。


しきい値は誤検出を減らすための余白として設けています。スマートフォンの指の離れやタッチパッドの慣性など、少量のスクロールを厳密に検知しない処置としてです。
このイベントの計測から、2つの指標を作ります。
- ファーストビュー通過率
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- ユーザーがファーストビューを超えてスクロールした表示回数(ページビュー)の割合。「初期合意の形成度」を示す
- 計算式:
ファーストビュー通過率 = ファーストビュー通過数 / 表示回数
- ファーストビュー通過後CVR
-
- LPでファーストビューを通過したセッションのうち、CVに至った割合。「通過した人を成果に運ぶ設計力」を示す
- 計算式:
ファーストビュー通過後CVR = CV数 / LPでのファーストビュー通過セッション
後述しますが、必ずしも「ファーストビューを通過しない=Webサイト離脱」ではありません。ファーストビュー内のリンククリック(ナビゲーション、CTA)でサイト内遷移する場合や、短いページで完結する場合など、ページからは離脱する(かもしれない)がWebサイトからは離脱しないケースがあります。
「通過しない=Webサイト離脱」ではないものの、「ファーストビュー通過率は『ファーストビュー離脱の疑い』をスクリーニングする強いシグナル」という位置づけです。
また「通過した=熟読」でもありません。スクロールは「次へ進む意思のシグナル」であり、ページ内容の理解を保証しません。
計測の詳細は別記事で解説します(Googleタグマネージャでの設定、Googleアナリティクスでの指標作成)。


本記事では先ほどの2つの指標をどう使うかに焦点を当てます。
ファーストビューはユーザーとの最初の合意形成の領域である
ここでページのファーストビューの重要性を再確認します。
ファーストビューはユーザーとの最初の合意形成の領域です。「このページはスクロールする価値がある」という合意を得て、ユーザー行動が始まります。「ファーストビューがすべて」ではありませんが、そのページにおけるユーザー行動のスタート地点になります。
一方で、キャンペーン向けLPや記事ページなどでその価値や品質を評価するとき、従来の指標では十分に評価できません。ページのパフォーマンス課題がどこにあるのかの切り分けが、エンゲージメント率や直帰率、コンバージョン率といった従来の指標では困難です。
そこで、「ユーザーが最低限の初期情報を消化して次のアクションへ進む意志を示したか(ファーストビュー通過)」を定量的に把握可能な状態にし、ページ評価の解像度を向上させよう、というのが今回の主旨です。
「ファーストビュー通過率」と「通過後CVR」の4象限マトリクスで課題を分解する
「ファーストビュー通過率」と「ファーストビュー通過後CVR」を掛け合わせることで、LPの課題タイプが明確になります。
縦軸に「ファーストビュー通過後CVR」、横軸に「ファーストビュー通過率」を置き、4象限のマトリクスを作成します。単なるCVRという最終結果だけでは「どこを直すべきか」は曖昧ですが、マトリクスにすると「次の打ち手」がわかりやすくなります。


象限A:ファーストビュー通過率が高い&ファーストビュー通過後CVRが高い(理想状態)
象限Aはファーストビューで合意形成でき、以降も良好に成果に至っている状態です。改善よりも活用に注力すべき領域です。
- 次のアクション
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送客量を増やす、ファーストビューのクリエイティブを他の商品に横展開する、アップセルや2本目のCV動線の可能性を検討する
象限B:ファーストビュー通過率が低い&ファーストビュー通過後CVRが高い(ファーストビューに課題)
象限Bはファーストビューを通過したユーザーのCVRは高いのに、ファーストビューで多く立ち止まっている状態です。初期合意形成に課題があり、改善の伸びしろが大きい領域です。
- よくある原因
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広告クリエイティブとファーストビューのメッセージ不一致、価値提案が抽象的または遅い、信頼材料がファーストビューにない、ページ速度が遅い
- 改善の方向性
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- ファーストビューのコピーを見直し
- 信頼材料をファーストビュー内に配置
- 広告クリエイティブとの一貫性
- 情報の優先順位の見直し
- ページ速度の改善
象限C:ファーストビュー通過率が高い&ファーストビュー通過後CVRが低い(内容やCTA、フォームなどに課題)
象限Cはファーストビューは受け入れられているのに、途中で説得力が落ちる、またはCTAやフォームや動線などに課題がある状態です。
- よくある原因
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ベネフィットの裏付けが弱い、比較検討に必要な情報がない、CTAが弱い、フォームの項目に難がある
- 改善の方向性
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- 本文中盤に比較表、FAQ、懸念の先回りなどを設置
- 導入事例や利用者レビュー、第三者評価といった社会的証明を設置
- CTAの見直しやそのタイミング設計
- フォームの簡素化、段階化、入力補助を強化
象限D:ファーストビュー通過率が低い&ファーストビュー通過後CVRが低い(全体に課題)
象限Dはファーストビューもコンテンツも動線も弱い状態です。部分最適ではなく、全体的な再設計が必要です。
- 改善の優先順位
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まずファーストビューで初期合意の形成を行い(象限B対策)、次にコンテンツでの説得と動線を再設計(象限C対策)
- 改善の方向性
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- 訴求(Who/What/Why)の見直し
- オファーの再定義。「請求資料で何がわかるのか」「無料相談で何が得られるのか」を明確に
- ページ構成の作り直し
- ターゲット設定の再確認
指標の「高い/低い」の切り分け方
各指標の「高い/低い」の切り分け方は、固定の基準値ではなく複数での相対評価から始めるのが良いです。送客チャネル、広告キャンペーンやクリエイティブ、デバイス別に分けて比較したり、業界や商材特性に応じて調整するといったアプローチが有効です。
ファーストビュー通過率もCVRも、Webサイト全体の平均値とLP領域では数値に開きがあることにも注意が必要です。またサンプルが少ないページは数値がブレやすく、一定期間を設けて評価して季節性や外部要因も考慮する必要があります。
分析→改善の手順
前述の4象限マトリクスを実務で回すための具体的な手順例を示します。
ファーストビュー通過率の低いページを特定する
Googleアナリティクスの探索レポートなどを使い、全LPのファーストビュー通過率を一覧化して数値の低いページをピックアップします。サンプル数が十分なページに絞り込むなどの調整が必要です。
Googleアナリティクスの探索レポートなどを使用すると把握できます。
どのようにGoogleアナリティクスでイベント計測するかや指標化、レポートでの使用例については別記事で解説しています。




参照元やデバイスなどで分解する
抽出したページに焦点を当て、参照元別やデバイス別に分解します(別記事での解説を参照。場合によってディメンションの掛け合わせではなくセグメントで対応する必要があります)。
- 参照元別: セッションの参照元/メディアで分解し、「広告経由だけファーストビュー通過率が低い」「メール経由は問題ない」といった傾向を把握。広告経由の通過率が低ければ、広告とLPの一貫性に課題がある可能性
- 広告キャンペーン別、広告クリエイティブ別:視点は参照元別と同様
- デバイス別: デバイスカテゴリで分解し、「スマホだけ通過率が低い」といった課題を特定。デバイス特有の問題が原因の可能性
この分解によって改善の焦点を絞れます。ページとしてファーストビュー通過率が低いのか、特定のセグメントだけ低いのかで打ち手が変わります。
マトリクスに配置して課題タイプを確定する
抽出したページ(または参照元やデバイスとの組み合わせ)を、4象限のマトリクスに配置します。
ファーストビュー通過後CVRは、Googleアナリティクスの探索でセグメント「ファーストビュー通過イベントを発火したセッション」を準備し、そのセグメントでのCVRを算出します(セグメント設定は別記事で解説)。
どの象限に該当するかを確認し、課題タイプを把握します。象限Bならファーストビュー改善、象限Cならファーストビュー以降の改善、象限Dなら全体再設計、という判断です。
ヒートマップやセッションレコーディングで深掘りし、改善仮説を立てる
マトリクスで課題タイプを特定したら、ヒートマップやセッションレコーディングなどを組み合わせて詳細を分析します。
- ファーストビューのキービジュアルやコピーは機能しているか
- CTAは機能しているか
- どのセクションでの離脱が多いか
- どのセクションが読み飛ばされているか
- フォームに誘導できているか、フォームでの挙動はスムーズか
ヒートマップツールは、Googleアナリティクスで「どこに課題があるか」のあたりをつけた後に「なぜ課題なのか」を深掘りするために使うと効果的です。
改善→再計測で効果を検証する
改善施策を実施した後、A/Bテストまたは期間比較で効果を検証します。
重要なのは、LPのCVRだけでなくファーストビュー通過率と通過後CVRも追うことです。「LPのCVRは上がったが、ファーストビュー通過率が下がった」なら、ファーストビューで期待過剰な訴求をした可能性があります。「ファーストビュー通過率は上がったが、通過後CVRが下がった」なら、ファーストビューで引き込んだユーザーに対するコンテンツでの説得が弱い可能性があります。
実務での注意点
ファーストビュー通過率(ファーストビュー離脱率)の目安はあるのか
指標「ファーストビュー通過率」の定義が異なる前提ですが、ヒートマップツールのPtengine(Ptmind社)は2021年頃より「ファーストビューの重要性と離脱状況の把握」を指摘しています。1
2025年のPtengineによる資料『業界別ファーストビュー離脱率レポート 2025 Spring』では、業界別の「ファーストビュー離脱率」を確認できます。資料では平均値や中央値などが登場しどれをピックアップするか迷いますが、ファーストビュー離脱率の平均は「20%~30%」です。「ファーストビュー離脱率はまず30%以内にすることが望ましい」とも指摘しています。2


この「ファーストビュー離脱率」は、おそらくWebサイト全体での数値である点に注意が必要です。キャンペーン向けLPではこの数値よりも低いケースがあります。
とはいえ(また本記事の指標の定義と異なるものの)、本記事での指標「ファーストビュー通過率」を導入していただいた当社クライアント様などの数値とも概ね一致しています(「ファーストビュー通過率」は概ね70%前後)。
ページ単位ではデバイスや流入元などで変わるケースがあり、まずは自社内での相対比較から始めるのが良いです。
「ファーストビューを通過しなかった」は必ずしもサイト離脱や直帰ではない
「ファーストビュー通過率が低いのは悪い状態か」という質問も挙がってくるでしょう。
ページの状態や目的によっては、通過率が低くても問題ない場合があります。ファーストビューを通過しないケースは多くあり、ページによっては(特にLP以外のページでは)他の指標と合わせて総合的な判断が必要です。
そのページがどのような目的で準備したものか、ユーザーに期待するアクションは何かを前提におき、該当ページのファーストビュー通過率を見ることになります。状況に応じて、遷移先のページやファーストビュー内コンテンツの利用状況の確認が必要です。
- ファーストビュー内のグローバルナビゲーションやCTAなどでサイト内への遷移が発生するケース
- ファーストビュー内のインタラクションだけでユーザー行動が終わるケース。動画再生、タブ切り替え、モーダル表示など
- ファーストビューで期待した内容を受け取れるケース。コンテンツが極端に少ない、もしくはページが短いなど
- ファーストビューで期待した内容と異なると判断されるケース。キービジュアルやページタイトルが期待と異なる
- SPAにて挙動を適切に計測できないケース
- ページ再読込、意図しないブラウザーバック
キャンペーンLPに関していえば、ファーストビュー通過率とファーストビュー通過後CVRを組み合わせて見ることです。ファーストビュー通過率が低くても通過後CVRが高いなら改善の余地がありますが(象限B)、ファーストビュー通過率が低く通過後CVRも低い場合、そのページの役割を見直す必要があるかもしれない(象限D)、という評価になります。



ファーストビューに配置したCTAに一定の効果がある場合、残念ながら今回の4象限マトリクスでの分析は難しいです。その場合は「エンゲージメント率×CVR」の4象限マトリクスで良いでしょう
デバイスごとにファーストビュー通過率が大きく違う場合は
デバイスごとにファーストビュー通過率で差がある場合、デバイス別に課題を分けて評価します。
スマホだけファーストビュー通過率が低い場合、スマホ固有の問題を疑います(レイアウト崩れ、フォントサイズ、タップ領域、追尾CTAの有無、ページ速度)。PCだけファーストビュー通過率が低い場合、PCでの表示を見直します(余白、ファーストビューの情報量)。
前提として、ユーザー環境やデバイスによってファーストビュー領域は異なります。ファーストビュー通過率が示すのは「ユーザーがどこまで見たか」ではなく「ユーザーが初期情報を消化して次へ進む意志を示したか」です。
まとめ:「ファーストビュー通過率」はLPの課題を分解できる
- 「ファーストビュー通過率」と「ファーストビュー通過後CVR」の2つの指標を組み合わせて、LPの課題を「ファーストビュー」と「それ以降」に分解
- LPのCVRという最終結果だけでは「どこを直すべきか」を模索する必要があるが、4象限マトリクスを使えば課題と打ち手が明確に
- GAで計測する価値は、全ページを同じ基準で比較でき、流入元別やデバイス別の分解も容易な点にある。ヒートマップは深掘り分析で使い、まずGAで「どこに課題があるか」の当たりをつけること
まずは全LPにファーストビュー通過イベントを導入し(実装記事を参照)、ファーストビュー通過率が最も低いページを選びます。そのページをマトリクスに配置して象限を確認し、象限に応じた改善施策を1つ実施してみてください。
特に象限B(通過後CVR高×通過率低)が見つかれば、改善の伸びしろが大きい可能性があります。ファーストビューの改善だけで、CVRが大きく向上するケースも少なくありません。
どのようにGoogleアナリティクスでイベント計測するかや指標化、レポートでの使用例に関しては別記事で解説しています。


GAの活用体制づくり、ダッシュボード構築、既存の計測設定の見直しなどをサポートします。








