読了率はテキストコンテンツのKPIになり得るか

コンテンツマーケティングのKPIに何を設けるかというテーマを取り上げるとき、テキストコンテンツの読了率が候補に挙がることがあります。読了率はテキストコンテンツのKPIになり得るでしょうか?

目次

「コンテンツ末尾到達率 (読了率)」はテキストコンテンツのKPIにはならない

最初に「読了率」の定義を決めておきましょう。ここでは「コンテンツ閲覧のうち、コンテンツの末尾に到達した割合」を指します。「読了」も誤解を生みやすい表現ですので「コンテンツ末尾到達率」と呼ぶことにします。

さてこの読了率、改め「コンテンツ末尾到達率」は、コンテンツマーケティングにおけるテキストコンテンツのKPIにはならないと捉えています。ゴールがオーディエンスの獲得だったとしてもコンバージョン獲得だったとしてもです。

KPIとして扱うには難しいのは、以下のような理由からです。

  • 行動喚起を評価する指標ではない
  • コンテンツの品質を担保していない
  • 「読んだ」という保証がない。指標名「読了率」は誤解を生みやすい

行動喚起を評価する指標ではない

まず、ユーザーがコンテンツ末尾に到達しただけでは「精度の高いページビュー」と近いニュアンスです。

企業がコンテンツを用いたマーケティング活動「コンテンツマーケティング」に取り組んでいるのであれば、閲覧ユーザーにどんなアクションを期待するかを意識しなければいけません。その中で「コンテンツ末尾に到達した」は期待するアクションとして弱いです。新たな行動を喚起していません。

コンテンツの品質を担保していない

2つ目の理由として、コンテンツの品質を担保していません。「コンテンツの品質が高ければ読了率も高いはず」と思いたいかもしれませんが、読了率(コンテンツ末尾到達率)の高いコンテンツは良質なコンテンツとは必ずしも言えません。

下図は当社の更新記事の文字数とコンテンツ末尾到達率、ページビュー数の関係を示した散布図です。

文字数とコンテンツ末尾到達率、ページビュー数の関係(2022年9月からの11カ月間のデータ)
文字数とコンテンツ末尾到達率、ページビュー数の関係(2022年9月からの11カ月間のデータ)

「文字数が多いほどコンテンツ末尾到達率は低い」「文字数が少ないほどコンテンツ末尾到達率は高い」ことがわかります。

あくまで当社Webサイトでの例ですが、以下のような結果です。

  • 文字数1000文字~2000文字:読了率30%~60%
  • 文字数2000文字~3000文字:読了率20%~40%
  • 文字数3000文字以上:読了率10%~20%

視覚的な理解を助けるために、傾向線を添えてみます。

文字数とコンテンツ末尾到達率、ページビュー数の関係
文字数とコンテンツ末尾到達率、ページビュー数の関係(傾向線付き。R2乗値は0.60)

記事の文字数とコンテンツ末尾到達率は負の相関にあることがわかります。文字数が多くなるほどユーザーはスクロールの手を止めるのです。コンテンツの質以前の話です。文字数だけがコンテンツ末尾到達率に影響を与えているわけではありませんが、考えてみれば当たり前の話です。

仮にコンテンツ末尾到達率をKPIに設定し「コンテンツ末尾到達率の高いコンテンツを作るべし」となったとき、文字数の少ない記事が高く評価されやすくなります。それは適切な評価ではありません。

KPIを設けるのであれば、コンテンツ末尾到達率ではなく「閲覧後の期待するアクションをどれだけ誘発できたか」を軸にまずは考えるべきです。

もちろん、コンテンツ単位でいくつかの指標とともにコンテンツ末尾到達率を把握し、内容や行動喚起要素(CTA)の反応の改善に用いることはできます。ページビューなどと共に基礎指標として把握してよい指標だと捉えています。その側面においては重要な指標です。

「読んだ」という保証がない

KPIとして扱うには難しいもう一つの理由。「読んだ」という保証がありません。単にコンテンツ末尾に到達しただけです。「読了率」という指標名は誤解を生みやすい表現です。

この指標は一般的なアクセス解析ツールでは標準で計測されません。「ページビュー数」などと違ってグローバルで統一認識のない指標です。人によって意味は「どれぐらいページを最後まで読まれたか」だったり「どれだけコンテンツの末尾に到達したか」だったり、あるいは「ページのどこまで読んだのか」「何%スクロールされたのか」だったりします。

社内に共有したときに、デジタルマーケティングに詳しくないメンバーに対して不用意に誤解を与えるのは避けるべきです。

KPIは行動喚起を軸に据えるべき

「読了率」を評価軸として扱いたくなる理由は、おそらく「ユーザーがどこまでスクロールしたのか」を把握したいからだと思います。その用途であればヒートマップツールによる把握の方がはるかに有益です。

例えば Microsoft Clarity ではヒートマップのレポートに加えてセッションレコーディングの機能があります。スクロールするユーザーであっても「文章をしっかり読むユーザーなんてほんの一部」だということを、私たちは早く知るべきです。

KPIは「閲覧後の期待するアクションをどれだけ誘発できたか」を軸に据えるべきです。ニュースレターに登録してくれたか、資料ダウンロードに至ったか、ソーシャルメディアへのシェアやアカウントのフォローに至ったか、もちろんコンバージョンに至ったかなど、行動喚起要素(CTA)などへの反応をまずは重視すべきです。コンテンツ末尾到達率をどれだけ高めても、それらの向上が見られなければ自己満足に終わります。

いくつかの補足説明

読了率の平均や目安はあるのか

一般的な「読了率の平均」「コンテンツ末尾到達率の平均」はないと考えます。内容、文字数、ページ構成、本題や注目箇所がどこにあるか、CTAがコンテンツ内にあるか末尾にあるかなど、さまざまな要素で変わります。

先ほど挙げた散布図のように、自社のWebサイトで傾向を把握してそれを基準の一つにするのはよいと思います。

例えば、この「補足説明」のように本題を終えた後の補足コンテンツを追加すればするほど、コンテンツ末尾到達率は下がります。補足を必要とするコンテンツもあれば不必要なコンテンツもあります。

その読了率の計算式は正しいか

「読了率(コンテンツ末尾到達率)」はグローバルで統一認識のない独自指標です。各自で然るべき定義をし、然るべき計測をし、然るべき計算式で算出する必要があります。

当社の場合、「コンテンツ末尾到達率」はGA4で計測したイベントを元に以下のように算出しています。

コンテンツ末尾到達率(%) = 該当ページにおけるコンテンツ末尾到達数 / ページビュー数

コンテンツ末尾到達数はシェアボタンのブロックレベル要素がブラウザのビューポートに表示された数

計算式の分母をページビュー数にしているのには理由があります。コンテンツ末尾到達数はGoogleタグマネージャの「要素の表示トリガー」を利用して計測していますが、オプション設定として項目「トリガーを起動するタイミング」にて「1ページにつき1度」を指定しています。コンテンツ末尾到達のタイミングでのイベント発生としては一般的な指定です。

この「1ページにつき1度」というトリガー発動タイミングは、ページの読み込みごとにリセットされます。ヘルプページに記載があります。

1 ページにつき 1 度: 各ページ 1 回だけトリガーが発動します。指定した ID や CSS セレクタに一致する要素が同じページ内に複数ある場合は、そのうちのいずれかが初めて視認可能になったタイミングでのみ、トリガーが発動します。ユーザーがページを再読み込みしたり、新しいページに移ったりすると、トリガーはリセットされ、指定した要素の視認可能性に応じて再度発動します。

要素の表示トリガー – タグ マネージャー ヘルプ

「読了率」でのGoogle検索結果の上位にあるページでは、適当な定義のまま計算式もないまま「読了率は重要」と書かれているものも多いです。もしくはGoogleアナリティクスのイベント出力設定の解説だけをしています。中には「ページにアクセスしたセッション数(またはユーザー数)」を使って計算すると解釈できる記述もあります。

少なくともGoogleタグマネージャの「要素の表示トリガー」を使ってGA4でイベント計測して「コンテンツ末尾到達率」を算出するのであれば、ページビュー数を分母として計算することになります。

メディアビジネスでは読了率はKPIになるか

コンテンツマーケティングではなく、メディアビジネスの場合に読了率(コンテンツ末尾到達率)はKPIになるかという問いに対しては「KPIにおいてもよい場合がある」と考えます。

ビジネスとしてメディアがどのように収益を生んでいるかに左右しますが、メディアのコンテンツそのものから一定の広告収益が発生していたり、コンテンツ末尾到達が営業的にポジティブに作用するのであれば、KPIになり得ます。書籍などコンテンツの最後まで到達してもらうことこそが最も重要なユーザーアクションというケースも該当しますね。

まとめ

コンテンツマーケティングにおいて、読了率(コンテンツ末尾到達率)はテキストコンテンツのKPIにはならない。

  • 行動喚起を評価する指標ではない
  • コンテンツの品質を担保していない
  • 「読んだ」という保証がない

ちなみにこの記事の文字数は約4100文字あります。ここまで読んでいただいたあなた、ありがとうございます。この記事の読了率は何%ぐらいだと思いますか?

MOLTSさんの2023年5月23日のTwitterスペース「読了率って大事ですか」に触発されています。

この記事は、当社の資料『コンテンツマーケティングの戦略設計 – 取り組むべきはオーディエンスビルディング』の内容の1トピックスを記事化したものです。

このコラムは、2023年8月16日発行のニュースレター「真摯レター」のコラムを再編集したものです。ニュースレターの購読はこちらから。

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株式会社真摯 代表取締役。データの根拠とマーケティング視点を軸に企業のWebビジネスの改善を支援しています。プロフィール詳細

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