アクセス解析すればなんでもわかる、なんてそんなわけはない
アクセス解析は、あくまでそのWebサイトで起きた「結果」であって、それだけではそこで起きてほしかったことの状況まではわかりません。「結果だけ」を見てもそれはただの「量」です。「測定しました」という事実の提示と、ほんの一部の部分最適化の提示までしかできません。
「効果を検証する」というのは、「起きてほしいこと、想定していること」--すなわち「仮説」と照らし合わせて初めてできます。
「こうなってほしかったけれど実際はこうだった」「これぐらいが目標だったけれど結果こうだった」となれば、「目標に達するには、何を、どこを、どう改善すればいいのか、どうすればいいのか」という視点で、Webサイトの中や施策を見ることができます。それが検証です。
つまり、そもそも事業戦略やビジネスゴールがないことには、アクセス解析の結果だけを見ても何も言えないわけです。
事業としての戦略とゴール、Webサイトの戦略とゴールの確認
事業戦略やビジネスゴールは、すでに必ずあるはずです。再定義の必要はあるかもしれませんが、目的なくビジネスを行うことはありませんから、なければおかしいです。
そこから紐付けられたWebサイトの役割も、本来はあるはずです。そしてそのWebサイトにも、ゴールと戦略、戦術があります。
もしこのあたりがうやむやになっているのであれば、アクセス解析の前にしっかり策定しておかなければいけません。少なくとも、Webサイトの目的とゴールに関しては、関係者は共通した認識を持って共有していなければいけないでしょう。
そのWebサイトの戦略や戦術をもとに、「ではどういった数字を追いかけていけばいいのか」という部分がいわゆる「KPI」です。ゴールも戦略も戦術もないのに、ポンとKPIだけ出てくるということはありません。
Webサイトの目的とゴール、戦略と戦術からKPIを考える
たとえば、Webサイトの目的とゴールが以下のようなものだったとしましょう。
- お問い合わせ数の拡大(お問い合わせ数:○件/月)
- 見込み顧客数の拡大(資料ダウンロード数:○件/月、資料請求数:○件/月)
- ブランドやサービスの認知拡大(指名系キーワードでの検索流入数:○件/月)
それぞれのゴールに対して、戦略があります。いろんな考え方があると思いますが、ひとつの例として以下の3つに分けてみましょうか。
- 流入改善
- サイト内改善
- 基盤の整備
たとえば、お問い合わせ数の拡大で顕在顧客層にアプローチするのであれば、流入改善の戦術として、広告やメール配信などが考えられます。もちろん自然検索経由の流入確保も大事です。サイト内改善の戦術では、よりアクションにつながるコンテンツ部分の見直しや、動線やナビゲーションの改善、フォーム離脱の改善などが挙げられます。
そして、それぞれの施策が「うまくいっているかどうか」を判断するための指標と基準を考えます。KPIです。
広告ごとのコンバージョン数やコンバージョンレート、CPAなどがキーなる指標でしょうか。広告ごとの直帰率、該当コンテンツカテゴリーからお問い合わせフォームへの誘導率なども重要な指標ですし、他にもいくつか考えられるでしょう。
それらを、戦術ごとに決めることになります。ターゲット層が異なるのであれば、層ごとに分けて考えます。
そこまでが効果を検証する前提の基盤です。
効果検証と改善
そこから先、「起きてほしいこと」から決めていったKPIと「結果」を照らし合わせる作業、つまりWebサイトの効果検証をした上で、「何を、どこを、どうすればよいのか」の改善の部分を考える段階になります。
キーとなるKPIの数値が目標値に届いているのか、その他のKPIのトレンドはどうなのか、その状況を判断して、改善策を考えていきます。戦術の優先順序や予算や工数などを考慮した上で、判断することになるでしょう。
以上が、アクセス解析をベースに効果を検証する課程になります。アクセス解析は「起きてほしいこと」に近づくために活用する基盤のデータです。データそのものが意味を持つのではなく、どう活用するかで価値が生まれてきます。
結果の数字は、仮説や戦術があって初めて意味を帯びる
繰り返しますが、戦略やゴールがないことには、アクセス解析の結果だけを見ても意味をなしません。ただの結果の数字に意味はなく、仮説や戦術があって初めて意味を帯びてきます。「とりあえずアクセス解析さえすれば、いろんな問題点がビシバシわかる」というのは妄想であって、どういった数字を見ていけばよいのかを整理した上で数字をつきあわせていくのがアクセス解析です。
数値データだけで判断するのは危険ですが、とはいえ重要な判断材料であることに間違いはなく、前のめりのビジネス視点でアクセス解析に取り組む重要性は理解しておく必要があるでしょう。