AIがGAで分析する時代に、計測データの品質向上とその設計が不可欠な理由

2025年7月23日、グーグルからGoogleアナリティクスのMCPサーバーが公開されました。MCPサーバーとはAIが外部のデータに接続するためのサーバーのことで、これによってGoogleアナリティクスがAIと直接連携できるようになり、自然言語でGA4の分析結果を得られるようになりました。

この記事のまとめ
  • AIによるGA分析は「仮説生成と初期検証」に有効な新しいワークフローをもたらす
  • データの正確性を常に検証する姿勢が必要
  • AIにも理解しやすいイベント設計・データ品質の向上が、今後の活用を左右する鍵となる
目次

「自然検索経由のCV率推移を前月と比較して要因を挙げて」が数十秒で回答される

実際にClaude Desktop経由でGAのMCPサーバーに接続して利用してみました。

「先月の自然検索経由のコンバージョン率の推移をその前月と比較して要因を挙げて」「記事内リンクのクリック数が多いページはどこか」といった質問を投げかけるだけで、数十秒で分析結果が返ってきました。そこそこ込み入った内容でもすぐに返してきます。

試験的な指示でもあり今回の内容の精度はともかく、指示をすれば主要な要因もピックアップし、今後に取るべき施策案も挙げてきます。

Claude DesktopでGoogleアナリティクスのMCPサーバーを経由して分析を行った例
Claude DesktopでGoogleアナリティクスのMCPサーバーを経由して分析を出力した例

これはなかなかアメイジングな体験でした。

従来であれば、例えばGA4の画面で複雑な操作を行い、データを抽出し、場合によってはスプレッドシートで加工して……という工程が必要で、そこからの考察と施策案という流れです。

しかし、AIによる分析ではGAの知識やUI操作がなくてもデータを活用して方向性の提示まで行い、意思決定につなげられます。この「AIに分析させる」という流れは、データ分析の民主化という観点から歓迎すべき動きです。

注目したいのは、軽い仮説をもとにその条件の分析をすぐに行える点です。

例えばブレストの場面で「もしかして週末のアクセスパターンが平日と違うのでは?」という仮説が浮かんだとき、カジュアルにAIに分析を依頼できます。このような「軽い仮説→即座にAIで抽出・分析」のサイクルを繰り返して仮説の精度を高め、その後でヒトが改めて精密な分析を行うという新しいワークフローを取ることができます。

いちしま泰樹

ミーティングでクライアントからの質問「○○の条件だとこのデータはどうなるのですか?」に対して1分後にラフなデータを示せたら、もしかするとそのトピックは前に進むかもしれません。

MCPサーバーの導入ハードルの高さとData APIの制約が当面の壁

しかし、現時点では利用者は限られたユーザーに留まるのではないでしょうか。非エンジニアにとってMCPサーバーの端末への導入ハードルがそこそこあり、それほどメジャーな利用法にはならないと感じます。

ただ、今後もしGeminiとの連携や各生成AIのコネクターが準備されるなど導入ハードルの低い手段が登場すれば、「AIによるGAを使った分析」は広まります。

もちろんGAの「アナリティクス インテリジェンス」機能がより柔軟になってくれたり、予告されている「AIエージェント」が登場するのもウェルカムです(正式名称は「Analytics Advisor」になる模様)。基本的にはこれらが登場する世界線だと思っています。

Google I/O 2025で紹介されたGoogleアナリティクスのAIエージェント
Google I/O 2025で紹介されたGoogleアナリティクスのAIエージェント(グーグルの記事より)

このGA4のAIエージェントは、「Analytics Advisor」の名称で2025年10月頃より一部ユーザーからテストリリースが始まっています。

一方で、技術的な制約は存在します。MCPサーバーはGAのData APIに接続するため、セグメントを利用できなかったりサンプリング発生の可能性があるなど、APIの制約を受けます。実際にMCPサーバーを使用していると数値の誤差が発生することがあり、事後の検証などデータの正確性には注意を払わなければいけません。

イベント名「evt_ac_001」ではAI困惑。「AIにも理解しやすい設計」への見直しの必要性

AIによる分析の普及を見据えれば、GAのデータ品質の向上がこれまで以上に重要になります。

まず、計測データ設計の見直しが必要です。取得すべきデータをきちんと計測しているか、イベントパラメータ設計は妥当か、データの粒度は適切かといった基本的な点を改めて見直す必要があります。ゴミ混じりのデータを分析してもゴミ混じりの結果が出てくるだけです。

もう一つ重要なのは「AIにとっても扱いやすいデータにする」という新しい視点です。イベント名やパラメータ値、UTMパラメータ値などは、AIが扱いやすくまた直感的に理解できる命名になっているかというのもその一種です。

例えば、イベント名「article_completion」であればAIは「記事の末尾到達」などと自然に解釈してくれますが、「evt_ac_001」のような省略された名前では分析の解像度がぼやけてきます。

実際に試用した際、AIは事前の情報インプットがなければイベント名をその文字列で解釈しました。「link_click_in_article」は記事内リンクのクリックと理解し、設定の詳細を伝えなくても合理的な分析を行います。

これを踏まえれば、WebサイトのURL構成なども含めて「AIにも理解しやすい命名や構成」にデータ設計を見直すことも、取り組む選択肢としてはあって良い内容です。

GAのサンプリングに気付かない一般ユーザーの落とし穴

AIによる分析では、いくつかの注意点があります。

まず、指示やプロンプトが適切かという人間側の課題、指示内容に即した期待通りのデータが返ってきたかという生成AI側の課題(ハルシネーション)、そしてデータの正確性の問題があります。

AIによる分析での課題
  • 人間側の課題:知りたい内容に対する指示やプロンプトは適切か
  • 生成AI側の課題(ハルシネーション):指示内容に即した期待通りのデータが返ってきたか
  • データの正確性の問題:処理上の数値の差や誤り、サンプリングの影響がないか

特にGAのサンプリングなどの数値の違いについては、一般ユーザーが気が付きにくい問題です。アナリストであれば分析結果を実際のGAの画面などで確認し、値の一致や異常の有無をチェックしますが、組織の一般的なユーザーはそのステップを踏みません。そうなると、AIによる分析結果をそのまま意思決定に使用するリスクがあります。

また、AIに分析を依頼する際は、文脈や背景、前提となる基礎情報をどうAIに渡すかも考えなければいけません。冒頭の例では背景や前提条件を何も渡していませんが、問題の前提条件、Webサイトの構成やURL体系、広告キャンペーンの内容、実施中の施策など、AIがより妥当な分析を行うために必要な情報を適切に渡す必要があります

「バイブ分析」の可能性とそれを支えるデータ品質の重要性

AIによるGAデータの分析は、当面は一部のユーザーによる利用にとどまるでしょうが、今後利用は少なくとも拡大します。そしてこれは、組織内でのデータドリブンな意思決定を促進する強力なツールにもなり得ます。

数年先はわかりませんが、まずはAIによる分析を「仮説生成と初期検証のための強力なツール」として位置づけて分析プロセスに組み込むと良いのではないでしょうか。

AIでラフに素早く仮説検証を試行錯誤し(「バイブコーディング」ならぬ「バイブ分析」的に)、有望な方向性を見つけ出してからヒトが詳細な分析を行う。ヒトの役割は方針を示し、AIとともに議論し、データの正確性を高める前提を整備し、AIの出力を検証し、最終的な分析内容に責任を持つこと。

このようなハイブリッドなアプローチが一つの効率的な進め方になります。

デジタルマーケティングの現場では、よりスピードと正確性の両立が求められます。AIによるGAデータの分析は、その解決策として大きな可能性を秘めています。その恩恵を最大限に活用するには、データ品質の向上とその設計、適切な運用体制の構築が不可欠です。技術の進歩を歓迎しつつ、基本的なデータ管理の重要性を改めて認識しなければなりません。

いちしま泰樹

いまはAIなどの手段が注目されやすい時期ですが、計測基盤の整備は今後いっそう重要になります。データをどう利用するかを踏まえてきちんと設計・計測・格納する、それで初めてAIが生きてきます。

まとめ

  • AIによるGA分析は「仮説生成と初期検証」に有効な新しいワークフローをもたらす
  • データの正確性を常に検証する姿勢が必要
  • AIにも理解しやすいイベント設計・データ品質の向上が、今後の活用を左右する鍵となる

この記事は、以下の記事からも少し触発されています。

GA計測設定の見直しの支援をしています。

このコラムは、2025年8月19日発行のニュースレター「真摯レター」のコラムを再編集したものです。ニュースレターの購読はこちらから。

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株式会社真摯 代表取締役。マーケティング視点と分析データの根拠を元に、Webサイトの分析改善やKPI設計など企業のデジタル領域のビジネス改善を支援している。

大学卒業後、外食チェーンストアに入社。その後の百貨店での勤務も含め、店舗現場での実務や接客コミュニケーションが仕事の原点。2002年にWebビジネスの世界に入り、2004年からアクセス解析を軸としたWebマーケティング支援を手掛ける。Web制作会社とインターネット広告代理店を経て2010年に独立、のち法人化、現在に至る。

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